ホリエモン取材の秘訣は「ヤバい空気になっても絶対に引かない」
中村:藤田さんやホリエモンみたいなすごい人をちゃんと捕まえてくることも、渡辺さんの力なんじゃないかなと思ってます。ホリエモンに、『多動力』の新刊出たからって「WEBでタイアッププロモーションするんで、インタビューさせてくださいよ」って言っても、「それが俺の何の得になるんだ」って言って出てくれないじゃないですか。
渡辺:堀江さんは完全にそうですね。
中村:どうやって口説いていったの?
渡辺:タレントの人とは違って、経営者の人は別に取材謝礼を求めているわけじゃないですか。彼らみたいな境地に行くと、取材を受ける基準は純粋に「面白いかどうか」になるんですよね。
まずは、相手に「面白い」と思わせるフレッシュな企画を提案することをすごく意識しています。そして、体験したことのないポジティブな話題を起こす。はじめて一緒に仕事をさせていただいたときは、とにかくこのファーストインパクトが大事だと思っています。それができたら“ファミリー”になってくれるんですよね。最近はそこから広告の出演依頼につながるなどして、だんだんと経済的な結びつきも強くなっていくという流れが多いですね。
あとは、どういう順番で口説くかもすごい意識してます。例えば、「マネ凸(トツ)」というお金のことを突っ込んで聞く連載は、はじめ旧「R25」の立役者でもある田端信太郎さんにインタビューしようとしたんですよ。でも、当時はつながりもなくて、連絡しても返信すら無かったんですよね。「それじゃあ」ということで、一発目は自社の代表である藤田晋に取材しました。この記事をバズらせたことで、田端さんから「取材いいですよ」って連絡が返ってきたんです。要は自分の手札の中から、とりあえず行けるデカい山からまず崩す。そこで話題化できれば、後ろも倒れていく。「どこから突破するか」はすごい意識しています。
権八:「新R25」で堀江さんと渡辺さんのやりとり何度も見ている人は、「大丈夫かな、仲良くやってんのかな」と心配する人もいると思うんだけど、実際にはもうファミリー化しているの?
渡辺:そうですね。ハラハラしたことは何回もありましたけど(笑)。
権八:堀江さんとお話して?
渡辺:お2人も分かるかと思うんですけど、堀江さんはコミュニケーションのリズムが独特で、うまく会話がハマらないんですよ。
権八:はいはい。
中村:ときどき、すごく怒ってるんじゃないかみたいなタイミングもあるし。
渡辺:話していて「そうそう」ってこちらに共感してくれる感じが全くないんで。ずっと「いや、っていうか…」って言われてズレるんですよ。昔はヤバい空気に何度もなったんですけど、自分の中で「絶対に引かない」って決めていて、それにより事態が好転していきましたね。逆に、そこで引くちゃうと空気が悪くなって終わりです。「ヤバいときこそ前に出る」っていうのを意識しています。
中村:あ~そうかも。
権八:それは経験を積む中で体得したものですか。
渡辺:そうかもしれないですね。ヤバい空気のときに「堀江さん、怒ってます?」って言えるかどうか。「ヤバいヤバい…」って後ろに下がるんじゃなく、「今ヤバい空気ですけど大丈夫ですか?」って前に出て言えるかが重要です(笑)。
権八:昔の記事では、堀江さんがムスッとしている顔の写真が出てるじゃないですか。ああいうのは、原稿を見たホリエモンの反応はどうだったんですか。「面白いじゃん」って?
渡辺:そうですね。笑ってくれましたね。そういうチェックは入らなかったです。ある程度自分のことをメタ認知できてるのかもしれないですね。
権八:そうかもしれないですよね。
中村:藤田さんではまた違うの?人によって進め方とか違うわけでしょ?
渡辺:タイプは違いますね。藤田さんで言うと、僕に対しては塩対応キャラなんですよね。堀江さんは“圧”みたいな。ひろゆきさんみたいな飄々としているタイプもいるし。でも自分の得意な距離感があるので、対応はあんまり変えずにやってるかもしれないですね。
権八:藤田さんも独特じゃないですか、対人コミュニケーション。
渡辺:分かります、分かります(笑)。つかみづらいところありますよね。
権八:そうなんですよ。僕も「この話大丈夫なのかな、まずいこと言っちゃったかな」と思いますよ(笑)。
中村:顔色変わらないですよね。
渡辺:あれが強みですよね。麻雀強い経営者って一番怖くないですか? 常に冷静で、テンションが上下しない感じ。
権八:会社を上り詰めた人ってああいう感じなるのかなっていうのは思ったけどね。
渡辺:でも若いときからでもあんな感じなんですよ。
権八:そうなんだ(笑)。
渡辺:昔の映像を見たけど同じ感じでしたね。