利用者のエピソードをもとに制作、武蔵境自動車教習所のブランドムービー

企業が映像と物語りを通じて表現する「ブランデッドコンテンツ」に、近年、国内外で注目が集まります。ブレーン6月号では、「企業の意志を伝える ブランデッドコンテンツ」を特集。本記事ではその中から、武蔵境自動車教習所のブランデッドムービー「たまみとおじいちゃん」をご紹介します。

武蔵境自動車教習所( 武蔵野市)は12月19日、同社初のブランドムービー「たまみとおじいちゃん」を公開した。免許を返納することになった車好きのおじいちゃんと、孫のたまみ。おじいちゃんが大事にしていた車を今度は自分が運転すべく、たまみは武蔵境自動車教習所を訪れる。

武蔵境自動車教習所のブランドムービー「たまみとおじいちゃん」。

「数少ない1回」に選ばれるために

「自動車教習所は、何度もさまざまな所を利用し、比較してもらえるものではありません。初めて訪れた教習所が、その方のスタンダードになります。当社では『教官』を『インストラクター』、『教習生』を『お客さま』と呼ぶなど、誠意を込めたサービスを特長としてきました。企業の姿勢を伝え、数少ない1回に当社を選んでいただきたいという思いから、動画をつくりたいと考えました」と話すのは、武蔵境自動車教習所営業部課長 山上沙和子さんだ。自動車教習所の広告といえば、看板やチラシなど似通ったものが多い。差別化のためにも、新たな手法にチャレンジしてみたいと感じていたという。

ブランドムービーの制作を提案した千代田ラフトの監督 小室崇さんは、「これまで武蔵境自動車教習所さんとはサービス訴求を目的に、アニメーションの動画をつくってきました。でもブランドムービーであれば、その良さがより伝わるのではと考え、制作を提案。お客さまだけではなく、社員の方々の士気を上げられるような動画を、と考えていきました」と振り返る。打ち合わせを経て、同社の理念「共尊共栄」を元に「インストラクターとお客さまの双方の心の動きを表現するストーリー」(小室さん)という方向で、企画が練られていった。

並行して、山上さんは約90 人のインストラクターや卒業生にアンケートを実施した。

たまみとおじいちゃんのストーリーは、その際に寄せられたエピソードを紡ぎ合わせてつくられたものだ。「主人公は、自動車教習所の主なターゲット層でもある20 歳前後の子に。気取らなさが主人公のイメージにぴったりだった、主演 日下玉巳さんのお名前から、そのまま動画の主人公も『たまみ』という名前にしています」と、小室さん。

動画の制作にあたっては、コピーと歌詞をコピーライター こやま淳子さん、音楽を福島節さんが担当し、たまみの言葉が心地よく流れていくような、ポップな音楽が生み出された。

「人生だって、もっと遠くまで行けるんだ。」というコピーで締めくくられる本作。

公開後、20年12月と21年1月の入所者数が東京都の教習所の中で1位になるなど手応えを感じたという。「初めてのことで驚いています。動画自体も、社内でもとても喜ばれました。その後館内のチャイムにも使用しており、毎日『たまみとおじいちゃん』の音楽を聴いているんです(笑)。当社のこだわりを明文化し、可視化したものとして、大きな財産になったと感じています。Webサイトだけではどの教習所も似通った表現になってしまいがちな中、自社の違いを表現できたのではと感じています」(山上さん)。

企業としての理念が元からしっかりとあったからこそ、ブランドムービーの手法が活かされた側面もある。「サービスもそうですが、武蔵境自動車教習所という企業自体に興味や好意を抱いてくれる方々が増えることで、コミュニケーションの土壌ができたのではと考えています」(小室さん)。

スタッフリスト

企画制作
千代田ラフト
演出
小室崇
C+作詞
こやま淳子
音楽
福島節
Pr(アシスタント)
鳥越夕幾子
PM
佐藤拓也
撮影
中道勇然
ビデオエンジニア
羽田野翔太
ドローンオペレーター
高田鍾司
HM
松岡彰、高塚那歩
出演
日下玉巳(たまみ)、下元史朗(おじいちゃん)、村田直樹(インストラクター)

ECD:エグゼクティブクリエイティブディレクター/CD:クリエイティブディレクター/AD:アートディレクター/企画:プランナー/C:コピーライター/STPL:ストラテジックプランナー/D:デザイナー/I:イラストレーター/CPr:クリエイティブプロデューサー/Pr:プロデューサー/PM:プロダクションマネージャー/演出:ディレクター/TD:テクニカルディレクター/PGR:プログラマー/FE:フロントエンドエンジニア/SE:音響効果/ST:スタイリスト/HM:ヘアメイク/CRD:コーディネーター/CAS:キャスティング/AE:アカウントエグゼクティブ(営業)/NA:ナレーター

 

月刊『ブレーン』6月号

 

【特集】
企業の意志を伝える ブランデッドコンテンツ

・マンダム/ギャツビー「カッコいいは、変わる。」
・エポック社/シルバニアファミリー「Forever Your Family」
・ブラザー工業「ブラザーからくり」篇
・企業が考えるブランデッドコンテンツの定義と活用法
文:小助川雅人(資生堂)

【青山デザイン会議】
偏愛なるクリエイターたち

・イソガイヒトヒサ
・加藤優一・菅谷真央(銭湯ぐらし)
・岸本拓也

 

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