監督自らが広告主企業の社長とブレスト
― 本作品に出資する広告主は、「スポンサー」ではなく「パートナー」。従来のスポンサーと、どのような違いがあるのでしょうか。
まず、今回の募集枠は12社なのですが、ありがたい事に、既に3社が決まっています。その1社1社に僕が出向いてお伝えしていることがあって、それは「これまでのスポンサーと下請けという上下関係はなしにしていただきたい。納得するまで議論をして、お互いにとって最高の関係を築づける50/50のパートナーになっていただける方としかご一緒できません」というものです。
一見傲慢ととられるよう発言だと思うのですが、みなさん即決で参加を表明していただけました。そこには、今までと同じことをしていたら生き残れない、という共通の危機感があるのだと思います。こちらもそれだけの事を言う以上、先方のメリットを自分のこととして必死に追求しています。実際やり始めると、とても興味深い事が起きていて、先方のメリットを追求すればするほど、作品の登場キャラクターが面白くなっているのです。
例えば、すでに決定しているパートナーさんのひとつに、お菓子メーカーさんがあります。『新世界』はハードボイルドな作品なのですが、このパートナーさんとの話し合いで屈強な男達のひとりがその企業のお菓子をいつもポリポリ食べているという設定が生み出されました。
そうすることによって、その強面のキャラクターが突然かわいく見えますよね。そのギャップがキャラクターに深みをもたらすんです。すると、そのキャラクターにオーディエンスが感情移入をしてくれて、プロダクトの魅力も増します。パートナーさんもプラス、僕たちもプラス、そして視聴者も無理やり宣伝を見せられているという感覚もなくプラス。ウインウインになります。
― 劇中に企業の商品やサービスが登場するとのことですが、具体的にはどのような構想がありますか。
この強面お菓子好きキャラのように、商品やサービスが作品の世界観の一部として登場し、密接にキャラクターと絡み合うようにしています。「商品が置いてあるだけ」といった単なるプロダクトプレイスメントではなく、プロダクトがキャラクターの人格形成に寄与するようにして、情報ではなく感情に訴えかけます。
さらに、『新世界』のキャラクターを使って各企業のCMも僕が監督して制作します。劇中でそのCMが流れるのはもちろんのこと、制作されたCMはお渡しするので、お好きな媒体でご自由に配信していただいて構いません。
その他、劇中で特別仕様のアイテムを生み出して、コラボ商品を開発するというアイデアも出ています。とにかく、すべてパートナーさん達とのアイデア出し次第で可能性が広がっているのです。
テレビではダメと言われるメーカーさん……例えばタバコやアダルトグッズのメーカーさんなども、すでに参加されている方々が拒絶しない限り大歓迎です。『新世界』は旧世界を破壊しようとするキャラクター達の物語なので、どんな商品やサービスであっても吸収できる自由さがあります。可能性は無限だと思っています。
「可能性の提示」をしていきたい
― 最後に、映画『新世界』を通して実現したいことは。
とにかく、既成の仕組みや慣習に囚われることのない、すべての枠組みを超越した世界をつくりたいですね。実は皆同じ想いで夢を追いかけているだけの話で、それを恐れずに実行すれば幸せになれるんだという事を証明したいんです。
僕にとってこれが日本における最後の作品になる予定です。たとえ今回の僕の試みがダメだったとしても、「俺ならできるかもしれない」と思ってくれる若者たちにこのバトンを受け取ってもらえるなら本望です。信長のような過去の日本人達が新しい道を切り拓いてきたように。