SDGsへの社会的関心が高まり、企業の社会的責任が改めて注視されている昨今。日本においても、各業界団体や金融機関など様々な業界がSDGs推進を掲げている。今後、環境問題や社会課題に配慮していない企業は、ステークホルダーからネガティブに映ることも予想されている。
SDGs対応の新製品
そのような環境意識が高まり続けている中、インクジェットプリント用フィルムやラミネートフィルムなどの広告用資材の開発・製造を行うニチエは、使用済みペットボトルからつくられる「タペストリー用ECOファブリック(NIJ-RF220P)」を2021年5月に発売した。使用済みPETボトルのリサイクルにより、廃棄物の低減やマイクロプラスチックゴミによる海洋汚染の軽減につながるほか、使用後も固形燃料に変えることで資源を有効活用し、循環型社会の実現を目指している。
タペストリー用ECOファブリックの使用用途は、主にタペストリーやバナースタンドなどのパブリック用印刷物だ。ニチエでは、店舗などで使用されたこれらの広告宣伝物を回収し、「RPF*」固形燃料へと生まれ変わらせるサーマルリサイクルを行っている。使用後にゴミとして廃棄するのではなく、製紙会社などのボイラー燃料としてリサイクルすることで、エネルギーの再資源化にも貢献している。また「RPF」は、石炭よりも30%程度のCO2排出低減効果があるなど地球温暖化防止にも寄与している固形燃料だ。
また、2021年からは使用済み飲料パックなどの古紙100%リサイクルにより生産する「ECO段ボールパネル(NDボードⅡ)」も発売。これまで、店舗内で使用されるポスターやPOPなどの下地材はポリスチレン製のパネルが多かったが、ダンボール素材にすることでプラスチックゴミの削減に貢献。また、本製品も使用後は回収し、サーマルリサイクル用の固形燃料へと再生可能となっている。
同社代表取締役の吉田伸行氏は「リサイクルされたものから製品をつくり、さらに使用後も回収してリサイクルするという、循環型のスキームをつくっているのが特徴です。従来はゴミとして捉えられていたプラスチックを資源として再定義し、RPFという固形燃料に変えることによって一生を終えていく。これを私は“究極のリサイクル”だと捉えています」と語る。
企業間で高まるSDGs意識
この2製品は、発売前・発売直後にも関わらず、百貨店、金融機関などから「採用したい」という声が上がるなど、反響が続々上がっているという。「今回発売のECOファブリックは、発売前にサンプルを試していただいた段階で『これは間違いなく採用する』と言っていただける企業さまがいらっしゃるなど、非常に珍しいことも起きています。それだけクライアント企業のSDGsへの意識が高まっている証。今年に入ってからは特にその傾向を顕著に感じていますね」と吉田氏。
もともとニチエでは、この2製品の発売前の昨年秋ごろから、6種類のインクジェット用印刷用紙を使用後に「RPF」固形燃料としてリサイクルするサーマルリサイクルの取り組みを開始。インクジェット用紙の再資源化を確立させていた。
「従来はヴァージン原料からつくった製品をサーマルリサイクルに回していました。『もっと環境に優しいものができるであろう』という視点から、『そもそも製品をつくるときにリサイクルの原料を使い、より循環型の環境対応製品をつくろう』と行き着いたのが、今回発売したのがECOファブリックとECO段ボールパネルです」。
サーマルリサイクルに活用できるECOファブリックやECO段ボールパネル、6種類のインクジェット用メディアの回収スキームは、クライアントの店舗形態やメディアの使用量などによって個別にする予定だ。
環境、クライアントの負荷を減らす
ECOファブリックやECO段ボールパネルは、リサイクル原材料から製造し、さらにサーマルリサイクルを行うため、従来製品と比較するとどうしてもコストアップにはなってしまう。「しかし、われわれとしても『リサイクル製品だから高い』ということを言い訳にしたくありません。SDGsに積極的に取り組んでいる企業さまや環境への負荷を減らしたいと考える企業さまと協力できることとして、極力従来の製品とあまり変わらない価格でご提供することも社内のテーマのひとつとして掲げています」(吉田氏)。
また、吉田氏は様々な分野でSDGsに取り込んでいる企業でも、「広告物まで環境に配慮することは、なかなか気づかない部分も多いのではないでしょうか」と指摘。「広告物も環境に優しいものを取り入れることで、さらに循環型社会への実現へ一歩近づくことが可能ではないかと思っています」と語る。
さらに、資源を有効活用し、環境への負荷を減らす本製品を使用することで、企業ブランド力の向上と、ステークホルダーとの関係性向上にもつながるという。吉田氏は「店舗内のPOPや広告物を通して、SDGsへの取り組みを対外的に発信することも可能です。それを武器に、新たな環境意識の高いクライアントさんに提案ができたり、ステークホルダーに対してもアピールすることができるのではないかと思っています」と話した。
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