リサーチャーが実践する「情報を扱うプロの3原則」
「情報を扱うプロの3原則」とは、「リサーチ界の猛女」のキャッチコピーを持つカリスマ・リサーチャー喜多あおいさんが著書(『必要な情報を手にいれるプロのコツ』祥伝社黄金文庫)で提示された、「情報を扱う上での基本」「鉄則」です。
その2 複数ソース主義
その3 アフターイメージ
この3原則は、情報の収集・発信、いずれの場面でも重要な「基本」になります。以下、順を追って、具体的な事例を示しながら、説明しましょう。
情報の出所、つまり、その出典(引用句や事柄などの出所、その典拠)と原典(引用や翻訳などの元になった書物。原書、原本)を吟味することは、リサーチ作業の基本です。そして、情報の出所である出典と原典を明記することは、リサーチ報告の鉄則です。
もう十数年前のことですが、ある輸入組合の公式ウェブサイトのコラムに、歴史番組のディレクターの興味をそそる「新説」が紹介されていました。そこで、その組合に問い合わせたところ、親切に出典を教えてくれたのですが・・・・・・その出典(在野の歴史研究家の出版物でした)を入手して、「新説」の根拠となっている史料(古文書)、つまり原典を確認しようとリサーチを進めるも、さっぱり見当たらないのです。
著者によって、この世に存在しない史料が捏造されたのか、あるいは、偽書によって著者がだまされたのか、はたまた、世に知られていない史料の発掘であったのか・・・・・・著者は死去しており、真相はわかりませんが、典拠を確認できなかったので、この「新説」を番組で取り上げることはしませんでした。件(くだん)の組合も、原典を確認しようとしていれば、この「新説」を掲載することはなかったと思います。
出所(出典・原典)が確認できない情報は外に出さない!ということは、個人でも日常的にルールとして守った方がよいでしょう。誤った情報の拡散は、公共の福祉に反します。まして企業が公式ウェブサイトで発信しては、企業のリテラシーが疑われてしまいますし、情報の性質によっては社会的責任を問われる可能性もあります。
ネタ探しのリサーチでは、個人のブログなどをヒントにすることもありますが、孫引きの情報を出典とすることはできませんから、そこから必ず情報の出所(出典・原典)を探ります。個人のブログのなかには、「この文献にこう書いてあった」と出典を明記していても、実際にその文献を読んでみると、そうは書かれていない、というようなこともままあります。
インターネットが発達した現在、誰もが情報を発信できるからこそ、どこでどう改変されるか知れません。雑話的なミニコーナーであっても、発信するからには情報の出所をきちんと確認して、出典明記を徹底することが肝要です。