【第1回】〈異世界の人々〉の力を借りる

「商品を正しく使ってほしい」という積年の思い

広告主として、クリエイターとどのように協力していけば、期待以上の成果が得られるのか—。自分たちだけで広告なり、キャンペーンなりを作るわけではない私たちにとって、これは永遠の課題ではないだろうか。

この連載では、2020年の「販促会議 企画コンペティション(販促コンペ)」でグランプリをいただいた「キャッツアイセイケース」を基に、「殻を破って、一つ突き抜けた結果を得るために」必要なことを、当時の状況やエピソードを振り返りながら、連載としてまとめてみたいと思う。そこまでには、いくつものターニングポイントがあった。できるだけ普遍的なメソッドにできるよう努めつつ、この連載を読む方々にも参考になればうれしい。

「第12回販促会議 企画コンペティション」でグランプリを受賞した企画「キャッツアイセイケース」の試作品。本コラムでは、この企画のその後についてもお知らせしていきたい

さて、読者の皆さんのお勤め先では、消費者向けの啓発活動をしておられるだろうか。私も担当しているのだが、この連載のタイトルにもした〈企画の殻〉が非常に強固になりがちなのが、啓発活動だと思う。

一般に、商品は正しく使ってもらってこそ、真価を発揮するものだ。万が一、使用に際して害を被る方が出ると、業界全体の価値が下がってしまう。たとえばお酒なら飲みすぎや飲酒運転、携帯電話なら「歩きスマホ」……。化粧品でも、食品でも、電子機器でも、クルマでも、正しく扱ってこそ、である。

当社が扱うカラーコンタクトレンズも同様だ。瞳の大きさや色彩を思い通りに演出できるカラーコンタクトレンズ(カラコン)の分野で、「Ever Color(エバーカラー)」をはじめ、複数ブランドを展開している当社も長年、「どうすればお客さまに正しくカラコンを使っていただけるか」という課題を抱えてきた。

大きな行動変化を起こせないもどかしさ

カラコンはいまでこそ、高度管理医療機器として医療機器承認番号を取得した商品を使用するようになっている。しかし、いわゆるおしゃれ用途として生まれたカラコンは、黎明期においては雑貨として扱われていた。その点、当初から視力矯正用として眼科医の診察のもと普及してきたクリアコンタクトレンズとは大きな違いがある。

雑貨として手軽に購入できたことがカラコンの普及を後押しした点は否めない。しかし一方では、眼科医による診察や装用指導がないために、カラコンを正しく扱わない方も増加していった。低品質な商品による被害も発生し、結果、規制が敷かれることになる。いまではカラコンは、販売できるのは高度管理医療機器の販売業許可を取得した事業者のみ、流通するのも医療機器承認番号を取得したメーカーの製品だけである。

カラーコンタクトレンズの売り場。華やかな印象を持たれるかもしれないが、いまやカラコンは高度管理医療機器である

残念なことに現在も、不適切な装用によって目を傷めてしまう人々がいる。そこで業界全体や、各社それぞれで、啓発活動を続けてきた。たとえば、ユーザー向けにインフルエンサーを起用したわかりやすい動画コンテンツを用意したり、カラコンの洗浄を推奨するためにノベルティを提供したり。

なにより当社では、「カラーコンタクトを文化にする」という企業ミッションを掲げている。そして、カラコンを文化として昇華させるには、正しい使用が不可欠だ。このミッションがあればこそ、地道な啓発活動を続けてこられたし、一定の成果は得られたと思う。しかし、望ましい装用法がしっかり根付いたと言えるほどの状況にはまだ至っておらず、もどかしさもあるのが、正直なところだ。

これまでの延長線上で発想していても、ユーザの大きな行動の変化は望めないのではないか—。

次ページ 「殻を破って、一つ突き抜けた結果を得るために その1」へ続く

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川部篤史、都留由佳梨(アイセイ)
川部篤史、都留由佳梨(アイセイ)
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