ベルサンテスタッフ(本社・大阪市)は、人材派遣を中心としながら、専門サイトの運営や業界最大規模の保育学生の就職フェアも行う保育領域の専門企業だ。「保育に特化した人材サービスを通じて、“かかわる”みんなが楽しく、そして幸せになるために、保育業界に貢献する」ことを理念に掲げている。
今回は、同社が初めて広報活動を行うために、『第28期 広報担当者養成講座』の修了し、インスタグラムを開始、1年半でフォロワー3.5万人のアカウントに育てた野間 直樹氏に話を聞いた。
—これまでのキャリアについて教えてください。
2011年に入社し、営業部に配属されました。人材派遣コーディネーターとして、滋賀県内の保育施設を毎日訪問し、保育士不足の悩みに応えるために、求人の提案と派遣をしてきました。その後、2019年秋にプロモーション事業部の立ち上げにあたって、本社勤務でディレクターとなりました。
—現在のプロモーション事業部では何をしていますか。
インスタグラムやnoteなどのSNS関連の運用を中心にPR領域を担当しています。
また、保育施設向けの新聞の発行や、当社のブランディング活動の推進といった広報業務を行っています。
—プロモーション部門が立ち上がった経緯は。
保育業界の現状に鑑み、「保育自体の魅力をPRする必要がある」という弊社代表の考えがきっかけです。
私が営業時代にお会いした園長先生や保育士さんは「どんな時も子どものために一生懸命で、とても優しく、保育に熱心」という方ばかりでした。
その一方で、保育をめぐる働き方や雇用について、課題が山積している現実も目の当たりにしました。
「もっと保育に関わる人が楽しく働くことができて、保育に対する社会的な価値を高めたい」という思いを持つようになっていました。
SNSの開始とプロモーション部門の立ち上げは、この思いを実現に移すチャンスだと思いました。
—『広報担当者養成講座』を受講したきっかけを教えてください。
それまで広報を担う独立したポジションが社内になく、まさに新規立ち上げでした。広報の専門知識を習得したいと思っていましたが、社内では広報について相談することができませんでした。
以前、『広報の仕掛け人たち』という書籍を読んで(発行元である)宣伝会議を知っていました。そこで宣伝会議の講座を検索して『広報担当者養成講座』を知りました。
講座を受講したいと経営陣に相談したところ、「ぜひ受けてください」と言ってもらい、早速申し込みました。
—講座で印象に残っていることを教えてください
自社について300文字以内で紹介するワークです。当社はカタチのある商品は少なく、「人材という無形の商品」を扱っています。日頃、全く別の業界の方と話す機会が少ないため、自社について短い言葉で的確に説明することの難しさに気付きました。
また、講座を通して「現場に足を運んでリサーチし、直接現場の担当者と話し、常にリアルを追求する」ことの重要性を認識することができました。
ほかにも、他の受講生と交流ができたことが印象に残っています。広報の仕事について話ができ、共感すること・刺激を受けることがあり、以降の広報業務をすすめる上で心強いと感じました。
—修了後にインスタグラムを始めたきっかけを教えてください。
プロモーション事業部の立ち上げ時は「SNSをやること」を依頼されました。そのため、「どのSNSをどういった戦略で始めるか」を考え始めました。
選定にあたっては、つながりのあった保育園の方々にヒアリングをしました。すると、以前は保育の専門誌を見て情報収集をしていたのに、今はインスタグラムのハッシュタグで検索している人が増えていることが分かりました。
また、保育の魅力を伝えるためには、端的な文章ではなく、視覚に訴えて、かつ定期的に発信できるインスタグラムが適切だと思いました。ヒアリングの結果から、今後もこの傾向が続くだろうという見通しもありました。
そうしてインスタグラム上に立ち上げたのが、保育士さんのための情報メディア「ほいコレInstagram」でした。
—コンテンツ企画で工夫していることは何ですか?
「隣にいる保育者さんに、つい話したくなる保育情報」を発信することにこだわっています。
例えば、折り紙の折り方などの制作方法、もしくはビジネス書籍にあるような、一般的なお仕事術はたくさん世にでています。
しかし、他の保育園の先生たちがどんな服を着て仕事をしているのかな、夏の制作はどんなことしているのかな?リフレッシュ方法は…など。そんな身近で自分と照らし合わせたい情報は収集しにくいと思います。
なぜなら、保育関連の研修はあっても知識の向上が目的となることが多いためです。
そこで、「他の園の保育士さんがどんな働き方をしているのか、もしくどんなマインドで働いているのか」を当社がコンテンツ化することで、目に見えるようにしようと考えました。
そうすることで、投稿を見た保育士さんのモチベーションアップにつながったり、業務を見直すきっかけになりたいと思いました。
もしかすると、私が『広報担当者養成講座』を受講したときに、他社の広報の方がどんな働き方をしているのかが気になったことと一緒かもしれません。
—投稿には一貫したコンセプトがあると聞きました。
はい。投稿で紹介した取り組みを保育士さんが実践してみることで、園児さんたちに楽しんでもらうことはもちろんですが、それと同じくらい「保育士さん自身が楽しくなること」をコンセプトにしています。
例えば、「手作りおもちゃ」の投稿内容では、段ボールの淵を可愛いマスキングテープで装飾してみたり、優しい色味のパステルカラーの画用紙を使ってみたり。
保育者自身が可愛いと思って作った気持ちはきっと子どもたちに伝わって楽しさの輪は広がると思います。
—フォロワーのペルソナもつくったのですよね。
「こんな人の役に立ちたい!」と思う保育士さんのペルソナをつくって、企画のたびに見返しています。
運用を経ることにどんどん細かい設定がされて、今では50項目にも上ります。
—『ほいコレ』のページはこだわりが詰まっていると感じます。本当に100%内製しているのですよね。
はい、もう1人の女性メンバーと、楽しく更新しています。
内製すべきと思った理由は、アウトソーシングでは自分たちのこだわりを表現できないと気づいたからです。
例えば、「夏のお歌や、夏の制作物特集」といった表面的なコンテンツであればアウトソーシングができます。
ただ私たちは、すべての投稿について、「あの園のこんな先生」がこの投稿を見たら、「こんな気持ちで喜んで読んでくれるだろう」と目に浮かべて、投稿内容を工夫をしたいと思っています。
保育に関わる方を応援するためには、ここまでこだわった投稿を続ける必要があると考えていましたが、それをアウトソーシングで実現することは難しいという結論に至りました。
そのため、当初から現在も100%内製をしています。
—投稿では、絶対に宣伝しないことを貫いているのですよね。
はい。当初、社内からは「求人の登録や売上増につながっているの?」という意見もありました。
ただ、僕が保育士さんだとして、「役に立つな・楽しいな」と思ってフォローをしていたのに、ある日突然 宣伝色の強い投稿がされたら、げんなりすると思います。
あくまでもコンセプトの通り、「保育士さんが楽しく働けるきっかけ」を届けることが重要ですので、投稿は自社の宣伝ではなくエンターテイメント性のある内容のみにしています。
その分、投稿内容を二次利用することで、業績にも貢献しようとしています。例えば、保育士向けの新聞に転載して営業ツールにしたり、頑張っている派遣スタッフの方々に案内するメールマガジンに転載しています。
—インスタの運用を続けて嬉しかった瞬間を教えてください
まずは開始半年でフォロワーが1万人になった時でした。当初は、まさかこんなにフォロワーが増えるとは思っておらず、メンバーとハイタッチするくらい嬉しかったです。
また「インスタ見たよ!」と言われることが増えました。
他にも、2021年4月にフォロワーの方から、「保育士から他の業種に転職したのですが、『ほいコレ』の投稿を見て保育の仕事がやりたいなと思い直して復帰しました」というダイレクトメッセージをいただき感激しました。
他にも、アンケートや応援企画など、いつも数百~数千を超える方が協力してくださいます。その度に、「保育士の方は本当に優しい方が多いな」と思っています。
—熱量の高い投稿を続けるためにメンバーが大きな支えになっていると聞きました。
はい。もう1人のメンバーは読者のペルソナに近く、デザインセンスがあり、保育士さんへの思いやりの気持ちを持って一緒に頑張ってくれています。
また、英語が話せるため、海外の面白い保育コンテンツや、エコ意識の高い保育系のインスタグラマーの方に取材し翻訳、コンテンツの拡充に活躍しており、頼もしい存在です。
—今回はインスタグラムの運用を中心にお話を伺いました。今後はそのほかにどのような広報活動をしていきたいですか?
やりたいことは山ほどあります。直近では、さらに保育士さんを応援するために絵本を作成中です。また今後も、多様なプロダクトやサービスなどを開発することで、応援する幅を広げていきたいと思っています。
そのためにも、講座で学んだ現場のリアルに興味を持ち続ける重要さを忘れずに、常に「今、保育士さんがどんなことに関心を持っているのか?」ニーズを探求し続け、新しい取り組みを実践していきたいです。
「広報担当者養成講座」でした
広報業務の重要性が高まる一方で、業務の基本、また新常態で広報がカバーする分野を実務に活かせるレベルまでを学ぶ機会は少ないものです。
本講座は、広報に求められる資質、社内情報が集まる仕組み、報道関係者への対応など広報が身につけておきたい基本を全10回でマスターできるカリキュラムとなっています。
<次回の開催日程 〔オンライン開講〕>
■講義日程
第33期 2021年9月3日(金)開催
■受講定員
80名を予定
詳細はこちら
お問い合わせ
株式会社宣伝会議 教育事業部
MAIL:info-educ@sendenkaigi.co.jp