帝国データバンクは6月15日、事業継続計画(BCP)に対する企業の見解についてのインターネット調査(調査期間は2021年5月18日~5月31日)の結果を発表。その結果、BCPを「策定済み」と答えた企業は17.6%と、前年同期比で1.0ポイント増加していた。しかし、未だ2割を下回る低水準となっている。
BCPに対する中小企業の取り組みが課題に
BCP策定率を企業規模別でみると、2021年は大企業が32.0%、中小企業が14.7%。2016年の開始以降この開きに大きな変化はなく、中小企業のBCP策定率がいまだ課題と言えそうだ。
中小企業からは、「中小企業の場合は資金調達を含めて対応は非常に難しい」(光学機械・写真機械器具卸売、東京都)「BCPの必要性は理解しているが、従業員があまり多くない企業でどのレベルのBCPが必要なのか分からない」(施設野菜作農業、岐阜県)などの声が挙がっている。
想定リスクは「自然災害」がトップ
BCPを「策定意向あり」とする企業のうち、事業継続が困難になると想定するリスクでは、「自然災害」(72.4%)がトップとなり、5年連続で最も高くなった(複数回答、以下同)。次いで、新型コロナウイルスなどの「感染症」(60.4%)「設備の故障」(35.8%)が続く。また、近年はサイバー攻撃の数も増加しているなか、「情報セキュリティ上のリスク」(32.9%)も上位となった。
策定効果は従業員の意識向上がトップ
BCP策定の効果については、すでに策定している企業では「従業員のリスクに対する意識が向上した」が55.5%でトップとなった(複数回答、以下同)。また、企業からは「BCP策定は入札評価にあたっての加点材料になる」というケースや、「事業継続力強化計画の認証によって税制優遇の対象となった」などのメリットも多く聞かれた。
スキル・ノウハウ面や人材の確保などが課題に
BCPを策定していない理由では、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」(41.9%)がトップ(複数回答、以下同)で高かった。策定における人材、時間、費用の確保も引き続き課題となっている。また、中小企業では「必要性を感じない」「自社のみ策定しても効果が期待できない」の割合が高く、BCPに対して懐疑的に考えている様子がうかがえる。
帝国データバンクは、必要なスキル・ノウハウの欠如などが理由でBCP策定率が下げ止まっている現状に対し、「企業からもBCPが必要と分かりながらも踏み出せないといった声や、策定に向けてモデルケースや具体的な手順を知りたいといった声が多く挙がっている。官民を問わず、特に中小企業に対してスキルやノウハウ、策定によるメリットを広く伝えていくことがBCP策定率を向上させる第一歩となるでしょう」とコメントした。