人から役柄をつくる、今泉作品の魅力の裏側(ゲスト:今泉力哉)【後編】

「満足したら引退」と言っていたのに、満足しちゃった

澤本:不思議と観終わったら、「楽しかった」「ハッピーだな」っていう気持ちになるじゃない。あれはいいと思ってね。群像劇だと大体重苦しく、映画館から出てきたときに、「人間とはなんぞや……」みたいに思って帰ることもあるけど。でも、観終わった感じが楽しかったなって。色々考えることあったけど、最終的に楽しかったっていう印象がすごく強かったんですよね。

権八:ゲラゲラ笑っちゃうシーンもあるしね。単純に、後味は本当に最高ですよね。

今泉:それは嬉しいですよね。何本かやっていたなかで、「ただハッピーエンドにしてもな」と考えた時期もあったので。ラストシーンを現場で書き換えていたのも、そういう迷いだったんですけど。ラストシーンを撮れて、「たぶん、今回はこういう終わり方なんだ」っていうのが見えました。一見、幸せそうだけど、幸せなのかは、今後は分からない。あとは、笑いが多い映画になったので、それが楽しさにつながったかなと思いますね。

澤本:ずっと映画を撮っていらっしゃっていて。それこそ『あの頃。』も、拝見しましたし……ちょっと前で言うと、『アイネクライネナハトムジーク』(2019年)とか。

今泉:ありがとうございます!

澤本:メインどころを大きな役者さんが張っていらっしゃる作品から、今回のも含めてたくさん撮ってらっしゃるじゃないですか。今回のが一番今泉さんっぽいっておっしゃっていたけど、あれはどういう感じなんですか?

今泉:オリジナルということにプラスして、配役が隅々まで自分で選べたっていうのは大きいです。「この人を絶対使って」という要望が毎回あるわけじゃないんですけど、隅々まで自分でキャスティングできることは、あんまりないのでそこは大きかったですかね。あとは、撮影や録音も一番本数多くやっている技師とできたり、多くのスタッフが勝手知ったる人とやれたこともあり……。

昔に撮った『サッドティー』っていう映画や初期の短編映画に近い映画って感じ。『サッドティー』は有名な人が出ているわけじゃないけど、最初に自分を知ってもらえた映画だったりするんで。ずっと観てくれている人からは“原点回帰”“やり切った感”とすごく言われますね。特に最近は原作ものをやらせてもらったり、メジャーの人がド真ん中にいたりする作品もやっている中で、今回は役者の上下がなかったり……。でも、それは若葉さんがすごいと思うんですけど。ワークショップに来ていたような無名な方たちと一緒に対峙していられる人というか。その辺ですかね。

あとは、ある種の満足感。満足ってまずなくて、基本うまくいかなかったとこばかり気にしちゃうんですけど。「満足したら引退だ」「終わりだ」って言っちゃっていたのに、ちょっと満足しちゃったんで(笑)。

一同:ははは!

今泉:これからどうしようみたいな(笑)。まあ、すぐに更新すると思うんですけど。そういう大好きな一本になったので、最初の方に言いましたけど、『街の上で』がつまんなかったり、ダメだなってなったら、たぶん俺の映画全部ダメかも知れないくらい、自分の色になったなと。

中村:大丈夫だと思います。『すぐおわ』メンバーも激おすすめなんで。今、絶賛公開中の映画『街の上で』、ぜひぜひ。このラジオを聴いている人だと、超おすすめ。ひとりで行ってもいいし、誰と行ってもいい映画ですよね。きっと、彼女とかと行っても面白いと思うし。

今泉:大丈夫ですね。俺の映画、カップルで行くと、リトマス試験紙になるみたいなこと言われてて。「一緒に観に行って別れました」みたいなこと言われたりしていたんですけど。

一同:ははは!

今泉:『愛がなんだ』とか、その以前のやつとかは、よくない恋愛がいっぱいだったんですけど、今回のは大丈夫かも知れないですね。カップルで行っても。

中村:映画『街の上で』、ぜひ観てください。この番組はTOKYO FMのデジタルコンテンツが集約されているスマホアプリAuDee(オーディー)でも、番組のトークのみ配信中です。もう一度聞きたい、知りたいっていう方はAuDeeで検索してみてください。というわけで、今夜のゲストは映画監督 今泉力哉さんでした。ありがとうございました!

今泉:ありがとうございました。

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