マーケティングのプロセスにおいて、DXのチャンスはいくらでもある
—御社ではどのようにデジタルトランスフォーメーションに取り組まれていますか?
今年5月に発表した中長期成長戦略で、新規事業を推進するビジョンに「FUTURE FOOD CREATOR=クリエイティブとフードテックで世界の食をリードする」を掲げたとおり、日本本社はDXに力を入れています。自社のオンラインストアを展開するだけでなく、有名ラーメン店の味を自宅やオフィスに直接届けるデリバリーサービス「RAMEN EX」や、日本初の音楽特化・配信特化・無観客ライブハウス「日清食品 POWER STATION [REBOOT]」などの取り組みを実施しています。
日本ほど先進的なことはできていませんが、欧州でもDX関連の取り組みを考えています。マーケティングは「調査をして、商品を開発して、広告宣伝をして、販売をして、顧客リレーションを構築して、KPI指標を分析して」といったようにプロセスが長いので、それぞれのプロセスにおいてDXのチャンスは複数考えられます。販売プロセスひとつをとってもECをどう進めるか?ということが考えられます。我々は去年からAmazon経由の販売を強化し、大きな売上の伸びを実感しています。Amazon以外にも、流通各社のECサイトやShopifyなど様々なプレイヤーと組んでいくことで、市場のカバー率を上げていきたいと考えています。
他にも、商品開発のプロセスにAIを活用できないかと興味を持っています。例えば、商品の表示確認です。20カ国で販売する商品ですから、ひとつのパッケージに複数の言語が使われていて、中にはギリシャ語のようなものもあります。こうした表示をすべて確認しないといけないので、どうしても時間が掛かってしまうのですが、AIを使ってスキャンしたら間違いが一瞬で見つけるといったことができないかと考えています。
また、ダイナミッククリエイティブにも着目しています。汎リージョナルのマーケティング活動では、同じクリエイティブを基本にしていても国ごとで言語が違ってきます。例えば、今回のカップヌードルのリブランディングでは、共通のフッテージを用意しておき、国ごとに違うコピーをあてなければなりませんでした。さらに、Youtube、Facebook、Instagram、Snapchatとプラットフォームごとにそれぞれの形式で素材を用意しました。すべての編集作業を人力で行ったのですが、ダイナミッククリエイティブが可能になれば、こうした業務を機械任せにできるようになります。となると、ベースとなるクリエイティブ素材を用意すれば、イギリスのこのターゲット、フランスのこのターゲットとアプローチ先を決めるだけで、クリエイティブが自動生成され、マーケティング効率が飛躍的に高まります。多国籍を相手にするリージョナルオフィスにとっては、まさにイノベーションだと思います。欧州ではすでに自動車会社が取り組み始めていると聞きます。こうしたことを考えると、昔は何千万円をかけてキラッと光るクリエイティブをひとつ作って、それをゴールデンタイムで展開するというやり方だったわけですが、広告のつくり方そのものが根本的に変わる可能性があると感じます。多額の予算を投じてすごく光るクリエイティブを作るよりも、ターゲットにあったクリエイティブをどんどんAIでつくっていくようになる気がします。