思い描く理想の女優さんは「いないです」!
中村:演技の方には初めからフィットしていけたんですか?戸惑いとかなかった?
加藤:戸惑いばっかりでしたね。事務所に入ってすぐはオーディション三昧なんですけど。オーディションのこととか何にも知らないから「私どうしたらいいんだろう」ということばっかりで。セリフも覚えられないし、どこから声出したらいいかもわからないし、瞬きもなるべくしないようにしなきゃとか考えてたら何もできなくて。初めて決まったのがBSスカパーの『I”s(アイズ)』(2019年)というドラマだったんですけど、その時は事務所に入って3年くらい経ってたのかな。そこでやっと、初めてお芝居の楽しさを知りましたね。なので最初は全然ダメダメでした。
権八:その間はお芝居のレッスンとか受けてたんですか?
加藤:受けてましたけど、大嫌いでした!「何したらいいの?私」っていつも思ってましたね。毎回半泣きでレッスン場所に向かって、半泣きで帰るみたいなことばっかりでしたね。それが3年くらい続いてたのかな。
権八:それはやっぱり、いつの日か「ちゃんとした女優になるんだ」っていう目標がないと頑張れなくないですか。
加藤:根が負けず嫌いなのが強いかもしれないです。「辞めたら絶対ダメだ」というのがずっとあったんだと今は思いますね。
権八:思い描く理想的な女優さんはいますか?
加藤:それは全くいないです。
権八:いないんだ!おもしろ!
加藤:そうなんですよ、いなくて。でも共演した女優さんや俳優さんに対してリスペクトは常にあります。何年か後にまた共演したときに「もっと成長した自分を見せたいな」とか、そういうのを思いながら今は頑張ってる感じですかね。
権八:ドラマや映画を観ていて、日本・海外問わず「この女優さんのこういう芝居素敵だな」みたいなことってあります?
加藤:私は勉強のつもりで見ていても、どうしても作品自体に集中してしまうんですよ。だからそういう「勉強」で作品を見るっていう気持ちにはなりにくいのかなって思います。どんどん作品に感情移入していくことが多いです。
権八:でもいいんじゃないですかね。フラットに見れて。変に「この人みたいに」てなりすぎるのも気持ち悪いもんね。
加藤:誰かの真似になっちゃいけないなとは常に思っているので、私は私らしくっていうことを常に考えております。
権八:かっこいい……。
中村:憑依型になるかもしれないですね。キャラクターに自分が憑依して、役になり切るみたいな感じの方が、小夏さんに向いてるやり方なのかも。
権八:さっき「『I”s』の出演が決まったことで、お芝居や女優の面白さがわかった」っておっしゃってましたけど、どういうところが「面白いな」って思ったんですか?
加藤:台本を読んで現場に向かうわけなんですけど、相手の女優さんや俳優さんは、私が描いていたイメージとは違う喋り方をしているんですよ。「文字で見ているだけのときとは全然違うな」と思って。そこで、役に「息を吹き込む」ってこういうことなんだろうなって感じたのがすごく大きかったですね。それに圧倒されたりもしたんですが、そこにしがみついていきたいなと思いました。
権八:なるほど。息を吹き込むと、生き生きとそこに人物が立ち現れますよね。『I”s』のときはどなたとご一緒されたんですか?
加藤:岡山天音さん、萩原みのりちゃん、白石聖ちゃん、あと(柴田)杏花というスターダストの女優さんですね。しっかりと共演したのは岡山天音さんなんですけど、岡山さんはすでにたくさん作品に出られていますし、素晴らしいのはご存知の方も多いと思うんですけど。何もできなかった私からしたら、本当に神のような存在だなって思いますね。
権八:現場で誰かのお芝居に圧倒されたりすることって、今もありますか?
加藤:ありますあります!「自分って何なんだろうな」って思うことばっかりです。圧倒されすぎてしまって。
権八:ずっとお話していて思いますけど、本当にめちゃくちゃ謙虚ですね。