関係者の不興を買うのではないか…
だがしかし──、これらのデザイン案で、ユーザーに対して望ましくない現状をぶち破る、行動変化を生み出すようなアイデアが出てくるだろうか。もっと正面切って、課題のの根っこを抜身の刃のような鋭さで伝えることはできないか。
そこで、意を決して、欲しいアイデアの一文に赤を入れた。
「正直めんどうなんだよね。
カラコンを正しく使うことが、
むしろ楽しくなるアイデア、募集」
ユーザーの心持ちをそのままさらけ出した。表現としては、尖ったと思う。
その半面、このまま出してしまうと、業界の方々や眼科医の方々の不興を買ってしまうのではないか、という懸念もあった。正しい使用法を「めんどうだ」と言ってしまっているようなものだからだ。ましてやメーカーの立場から、ここまで言い切ってしまうことが果たして受け入れられるものなのか。
ここまでくると、私一人でいくら悩んだところで解決には至らない。そこで、社長に直接持ち込んで判断をあおいだ。
五島社長「構わないですよ。それくらいやらないと、意識は変わらないんじゃないですか」
了承は、すんなりと取れた。
よし、これでGOだ!
課題をごまかさずにさらけ出す
–後日談で、「販促コンペ」最終審査員の藤井一成氏との対談を通して、初めて気づかされたのだが、この振り切り方が、結果としてグランプリアイデアを生み出す契機として、非常に効果的だったのではないか、とのご意見があった。
曰く、ユーザーも、やらなきゃいけない、やったほうが望ましいのはわかっている。でも、どうしてもめんどうさを感じてしまうという現実。
その不都合な現実を、クライアントの立場から、角を丸めたり、お茶を濁したりせずに、ここまで開き直って言い切ってしまうことが、衝撃ですらあった。クリエイターに求めるクリエイティブジャンプを、ギリギリの線まで明確に絞り込めていた。それが今回のグランプリを生み出したカギであったのではないか–そうしたコメントをいただいた。
ふたつめのターニングポイントは、「抱えた課題の不都合な現実を、取り繕わずに認め、受け入れた」である。
そのスタンスが奏功し、応募アイデアは実に多様な方向性に及び、当初100案も集まれば上出来と考えていたところ、最終的には250を超えるアイデアが集まった。殻を破った解決策が続々と集まりつつあったのだ。しかし、その中からたった1案だけを、関係者の合意を得て、一つを選定しなければならない。
どのように取り組めば、独善的にならずに組織内で合意を得て、選定作業を進めることができるだろうか……。次回は、このあたりのエピソードについてご紹介したい。
【殻を破って、一つ突き抜けた結果を得るために その2】
躊躇せずに、困っている現状を、オブラートにつつまず、さらけ出す