エリアターゲティングの重要性
同社では、利用促進についてはエリアターゲティングができる媒体を選定している。それは、サービスの利用対応地域かどうかが少しの距離の違いで決まるサービスだからだ。「細かいエリアターゲティングができる施策でないと、チラシ・広告が届いても対象外だったということが起こります。そうすると、かえって悪印象を与えてしまうのです」と山敷氏。
そこで同社が選んだのがポスティングだった。エリアターゲティングできる媒体として、映画館でのサンプリングやネット広告なども行っているが、それでは都道府県単位であったりと精緻ではない。市区町村単位など細かいターゲティングができるポスティングが有効だったのだ。
「当社ではネット広告のようにポスティングを運用しています」と話すのは、同社プロモーション本部の大谷拓摩氏だ。
デリバリーアプリは、認知が広がってきたとはいえ、まだまだ利用している人は少ない。初めてデリバリーアプリを使ってもらうために、ポスティングチラシを様々な視点から検証し、運用している。
「チラシのデザインは頻繁に変えていますし、いつどこに何回配布したのかなどを常に分析しています」と大谷氏。チラシにどういう料理の写真があるのかや、テキスト、レイアウトによっても反応は変わるため、チラシのデザインを何度も変えて検証している。
だが、チラシに反応してダウンロードされたとしても、使ってくれるかどうかはまた別だという。それは人気・有名店がその地域に登録されているか、選べる店舗数が多いかなどによっても変わるはずだとの仮説を持ちながら分析していると大谷氏は話す。
また、居住エリアによって頼める飲食店数が変わるため、1km2単位でのリピート率も変わってくると同社では想定している。それくらいエリアで区切れることが重要な要素となっている。「デジタルのサービスのため、どちらかというとネット広告などとの相性がいいと思われがちです。ですが、本当はアナログな側面もあるので、ピンポイントにユーザーに届くポスティングが効果的です。ネット広告のエリアターゲティング精度は十分ではなく、東京だと判断されていた人が別の都道府県在住だった、ということもあり得ます」(大谷氏)。
10m2単位など細かく区切れるデジタル媒体もあるが、そうなると配信コストが高くなると山敷氏は話す。現状ではまだまだポスティングの方が効率的にリーチできる。
しかし、ポスティング業界においてもその進化が必要とされている。「人力で行うポスティングの効率を考えると、集合住宅に配布されることが多いため、戸建て住宅へのリーチがまだまだ不十分です」と大谷氏。
さらに、ポスティングをネット広告のように運用するやり方は、現状はマンパワーで成立していると山敷氏は話す。「発注システム、クリエイティブの制作ツールなど、発注側に沿ったかたちでデジタル化が進んでほしいですね」。
これらはポスティング業界における今後の課題といえるだろう。