日々の売上データや、顧客データの管理って、なぜ必要なんでしょうか?
AdverTimes.の読者の方には、データ分析は当たり前の業務で、「自社にとって〈なぜ〉必要なのか」は、考えるまでもないことかもしれません。しかし、あえてその理由、意義を考えてみるところから、この連載をスタートしたいと思います。データ分析にとって、大切な第一歩だからです。
たとえば次のような理由が思い浮かびます。
「顧客の動きをいち早く把握し、それに基づいて、すばやく、かつ正しいビジネス判断を下すため」。
もしかすると、みなさんの周りには、「そんなことにいちいちデータ分析などいるか! 長年培った勘と経験、そして度胸で動くのが一番早い!」という方もいるかもしれません。
しかし、奇しくも、新型コロナウイルス感染症の拡大で、好むと好まざるとにかかわらず、私たちの生活の仕方や働き方は以前とは異なる部分が出てきました。もちろん、顧客も同様です。彼ら、彼女らがどのように活動しているか、これまでの勘と経験で判断するのは危険かもしれません。なにより、勘や個人的な経験は、どこまで通用し、どこから通用しないのか、という判断がしづらく、他人との共有も困難です。
つまり、人々の行動をデータ分析によってすばやく、冷静に議論可能な形でとらえ、仕事に生かしていくことの大切さが、コロナ禍のいまこそ、改めて浮き彫りになっていると言えます。
さて、お題目はわかりました。早速データを準備し、上司や同僚、あるいは取引先へ最適なデータを提供し、成果をあげていきたいわけですが、大がかりなツールは必要ありません。
活躍するのは、名前は知っていても、意外と使いこなせていない「Excel」です。連載の1回目ではまず「Excel」の全体像を。2~3回目では作業スピードの向上と、実用的な関数を。そして4回目では、グラフとレポートの作成に注目し、分析結果を他人へ的確に伝えるスキルについて解説をしていきます。
データとの付き合い方、実務で使う範囲のExcel機能やレポートの方法は一度読んだだけでは覚えきれないものですので、ブックマークに入れておくなどして、折につけ活用してください。
全体像を知っておくことが習熟への近道
さて、特に「Excel」のように普及したソフトウエアだと、「◯◯のやり方」のような個別の疑問に対する答えが、インターネット検索で多く見つかります。わからないことがあれば、そのつど調べ、機能を覚えていけばよい、という気もしますが、私たちの目的は「顧客の動きをいち早く把握し、それに基づいて、すばやく、かつ正しいビジネス判断を下す」ことにあり、「Excelが得意な人」になることではありません。
ともすれば、「つまずいては検索、つまずいては検索……」のくり返しで、時間の浪費になってしまいがちです。最初に、どういう段階を踏んで、上記の目的を叶えていくのか、という全体像を把握しておくことが、結局は近道になります。
これがそのステップです。
上達へのステップその1:Excelの基本テクニックを知る
「Excel」の基本操作、特にショートカットキーを用いる手作業のスピード向上は、スポーツでいう基礎体力を身に付けることと同じです。同様に、試合に勝つことや、いい記録を出すことが目的ですから、あくまでここは最初のステップです。
上達へのステップその2:データ加工・集計を知る
収集した生データのままだと、「顧客の動きをいち早く把握し、それに基づいて、すばやく、かつ正しいビジネス判断を下す」ことは非常に困難です。スピーディーに適切な判断をするために必要な加工を施します。
上達へのステップその3:データ分析・レポーティングを知る
「Excel」には、分散、相関、F検定、フーリエ解析、回帰分析、t検定、z検定といった高度な統計分析機能も備わっています。もちろん有用ですが、私たちにとって、「どんな高度な分析手法を用いたか」をアピールすることは重要ではありません。それよりも、分析でわかった事柄のうち、どれがビジネス上、重要な発見であるかを見極め、データ分析知識がなくても伝わるように視覚化するか、という点にレポーティングの重要さがあります。
今回は、目的の設定と、全体の概観をしました。特に目的の設定。目的があればこそ、道をまちがえずに進んでいくことができます。
では次回は、ステップその1の、データ収集作業のスピードを上げるために理解すべき、ピラミッドの一番下にある「Excelの基本テクニック」について解説します。
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講師プロフィール
日本頭脳 代表取締役
ITストラテジスト、応用情報技術者。早稲田大学理工学部卒。世界最大級のコンサルティングファームであるプライスウォーターハウスクーパース出身。IT戦略策定および業務システムの企画・要件定義・設計に精通しており、数多くの業務改革プロジェクトをリードしてきた。日本頭脳株式会社のミッションは、オフィスワークの生産性革命。主力事業として、会議・打合せSaaS、データ処理アウトソーシング、業務効率化ツール開発、Excel生産性向上研修などを展開している。