ゲーム・コミュニケーションの3分類
今年の受賞作におけるゲームコミュニケーションは、以下の3つに分けることができます。
A. ゲーム世界で広げるファンづくりと拡散
B. 現実世界の課題を、ゲーム上にて解決
C. ゲームプレイヤーに向けた企業アクション
A. ゲーム世界で広げるファンづくりと拡散
まず、わたしが一番好きなキャンペーンである、ウェンディーズの「SUPER WENDY’S WORLD」から。ソーシャル&インフルエンサー(Social & Influencer)部門でゴールドを受賞。
2019年の同部門にてグランプリをとった「Keeping Fortnite Fresh」の進化系として、今度はあらゆるゲームで、ウェンディーズのマスコットキャラ「Wendy」が暴れまわっています。ゲーム内でのスキン・カスタマイズによる自社キャラ化や、どんなゲームでもその特徴を理解した上でウェンディーズならではのメッセージ「フレッシュな肉がいい」につなげています。
また、今年のソーシャル&インフルエンサー(Social & Influencer)部門のグランプリだったバーガーキングの「STEVENAGE CHALLNEGE」でも、ゲームの仕組みをうまくハックした手法で、自分たちのブランドを上手に見せることに成功。
両者ともゲーム内だけで閉じず、配信やTwitter投稿キャンペーンを絡めるなどゲーム外への拡散をしっかりと設計もしています。
B. 現実世界の課題を、ゲーム上にて解決
エンターテインメント(Entertainment)部門でゴールドに輝いたランファン・ブル協会の「Undercover Avatar」では、多人数参加型ゲーム「Fortnite(フォートナイト)」の世界で数十名のスタッフが「プレイヤー」としてではなく「DV相談員」として出現しました。ゲーム内の夜回り先生です。
また、惜しくもショートリスト止まりでしたが、マイクロソフトのゲーム機「Xbox」の「Beyond Generations」は オンラインゲームで一緒にプレイすることを通じて離れた場所に住む、祖父母の孤独を孫が癒すというプロジェクトです。日本でも孤独・孤立対策担当大臣が誕生するなど、世界的に注目を集めるテーマでのチャレンジです。
C. ゲームプレイヤー向けのアクション
ゲームプレイヤー自身をターゲットにしたキャンペーンでは、ケンタッキーフライドチキン「SHIFT+ K+F+C」が評価されました(クリエイティブEコマース部門ブロンズなど受賞)。これは、社名の頭文字「KFC」をゲームユーザーに向けて“チートコード”として公開し、ゲーム中の注文を促進したキャンペーンです。
また、Xboxがプレイヤーに「戦い」ではなく、ゲーム内で「旅行」を促した「The Birth of gaming tourism」(プリント&パブリッシング部門ゴールドなど)。グラフィックが現実より美しいと表されるゲームのシーンから実際に観光ブックを出すなど、現実とゲームの境界線がなくなりつつあることを象徴した企画です。
Visit Xbox: The Birth of Gaming Tourism from McCann London on Vimeo.
例えば、TwitterなどSNSでの機能として存在した「#(ハッシュタグ)」が、いまや広告コピーでも普通に使われるようになったように、ゲーム内の何らかの話法が、これからは普通に使われる可能性があります。