——テクノロジーが暗黒を生む、とは
L:そもそもテクノロジーには破壊力がある。そして、私たちは常々、企業やブランドが先を行くためには変革を必要とすることも語ってきた。
しかし、一方で人々は、企業やブランドに対して、より大きな人間性を求めている。両者は共存できるという思想があるからこそ、テクノロジー自体、または自分たちのやっていることの規模の大きさに直面したときでも、人々のニーズを逸脱した技術を用いず、また、テクノロジーに溺れずに済んでいる。
マーケティングチームがテクノロジーチームと緊密に連携して、より良い製品やサービス、コミュニケーション体験を生み出すのを支援するというのも、人間性を重視する思想に基づく。
R/GAがフォーカスしているのは、自分たちが生活し、また取り組んでいるテクノロジープラットフォームに、人間性と創造性を組み込むことだ。マーケターとして最も真摯な姿勢で取り組むなら、(我々は)人々が最善の生活を送り、目標を達成することがまずあって、そのために役立つ製品のデザインについて考えられるようになる。また、世界に良い影響を与えることを通じて、クライアントのブランドの構築を支援することも。包括的なプランニングでも、人々のデータをより緻密に扱う場合でも、マーケターは仕事をする際、より人間に優しい選択をすることができるのだ。
私たちはそれを次のように要約した。
「私たちは、さらに人中心の未来に向けた事業とブランドのデザインを行っていく」。
これが、これからのR/GAの9年間のビジョンになる。
——次の9年間への変化は始まっているのか
L:2020年は、世界的な試練の年であり、変化を受け入れるという意味では理想的なタイミングだったのだろう。
多くの企業と同様に、私たちも社員とビジネスを長期的視点で守っていくために、業務改革の必要があった。私達は文字どおり免疫を持っておらず、別れを告げなくてはならなくなった仲間や同僚もいたが、重要だったのはグローバルリーダーシップ人材の登用だ。ティファニー・ロルフとベン・ウィリアムズは世界視点でクリエイティブワークと製品の仕事を指揮し、ポール・ターツィオはグローバルマーケティングサイエンスチームを統率してくれている。
コラボレーションツールなどへの投資も行い、仕事の進め方も見直した。結果、R/GAはスリム化し、機敏に、協調的になれたと思う。2021年度の新規事業では、非常に順調な成功を収めている。
2020年度は、グローバル企業としてどのように社員やクライアントにかかわり、コミュニケーションしていくかについても振り返る機会だった。在宅勤務や個別ミーティングなどの実施方法は、それを選択した社員にとって、今後さらに柔軟で公平なものになっていくだろう。
私たちはさらに人間味あふれる企業、かつ、フットワークの軽い企業になるというミッションをうまく果たしたと感じている。