——スタッフに求める能力については
L:クライアントの新規、既存を問わず、求められる役割が広がっているのは確かだ。特に、コピーライティングから、ビジュアルデザイン、エクスペリエンスデザインに至るまで、あらゆるレベルのクリエイティブ部門における人材が求められており、採用活動を強化している。
クライアントからの需要と言う観点では、CRMやロイヤルティー(ブランドへの忠誠心)といったものへの要求の高まりを認識している。すなわち、我々R/GAがリレーションシップ(関係)デザインと呼んでいるものだ。
私たちの考えでは、顧客を保持したいブランドは、必ず顧客との関係を構築しなければならない。当社にとっては新たな需要の領域だと思う。
ただ、ブランドが顧客のエコシステム全体とつながることを支援する場合も、ゴートゥマーケットのアクティベーションを人間的な方法で実施する場合も、私たちは常に創造性のキャンバスとしてのエンジニアリングメディアに焦点を当てている。
顧客接点となるメディアについても、プラットフォーム、アドテクノロジー、メディアパートナーシップを通じた単なる取引中心のビジネスではなく、クリエイティブな分野としてとらえている。メディアは、革新的なクリエイティブの機会を引き出し、強化するものということだ。
——日本におけるビジネス展開は
L:2017年に東京オフィスを設立して以来、日本はずっとR/GAにとって戦略的な市場であり、高成長を遂げている。新たなリーダーシップが整い、当社のブランドは日本でも知名度が上がり始めている。これは、私たちの仕事と、チームに集まる人材の才能によるものだ。
最近では、日本IBMの Digital Maker Labsから嶋田敬一郎を招聘した。これは、当社の日本市場における改革に沿った取り組みだ。その他にも、クリエイティブプロダクト部門を牽引する中出雅也、プロダクション部門を率いるディールナ・マツバラをはじめ、何名かのリーダーシップを採用した。
彼らはストラテジスト、テクノロジスト、デザイナー、プロデューサー、ビジネス界のリーダー、クリエイティブ、コンテンツクリエーターの強力なチームと連携している。市場における強力なグローバルクライアントとローカルクライアントに恵まれ、成長し続けているが、引き続きクライアントとの深いパートナーシップを確立し、自社の人材と独自のサービスを向上させ、将来的にさらに多くの日本のクライアントに提供することが重要だ。
たとえば資生堂「Beyond Time」のように、AI(人工知能)中心のディープテックなインスタレーションは、2人の人物が時間の境界線を越えたように感じられる〈タイムマシーン〉を挙げたい。こうした日本全国で生まれている革新的で野心的な創造性は他のR/GAのオフィスにもシェアされ、取り入れられている。逆もしかりだ。
私たちのグローバルネットワークの優位性は、ローカル広告代理店からは得にくい、ブランドサービス、能力、またグローバルな視点の提供が可能であることだろう。デザインとテクノロジーを用いて日本の「未来をプロトタイプする」機会を、そして楽しみを、多くの日本の企業や人々に体験していただくことが、我々の大きな目標でもある。
(了)