視聴率で測れない注目度を分析
TVISION INSIGHTS(ティービジョン・インサイツ)は6月22日、サッポロビールで主にテレビCMを担当する重政友紀氏をゲストに招いたオンライン配信のセミナーを開催。2020年2月に発売した、新ジャンル「サッポロ GOLD STAR」のテレビCMがどのように視聴されているか、広告表現のポイントとともに紹介した。
TVISON INSIGHTSは、カメラを通じて人体を認識する技術を用い、テレビ前に視聴者がいるか、顔を画面に向けているかといったデータを取得し、〈視聴質〉として提供している企業だ。現在は関東1都6県で1000世帯、関西は大阪府で100世帯に端末を設置し、データを収集する。
基本となる指標は、テレビを点けているか、その前に滞在しているか(ビューアビリティ指標、滞在度)と、顔をテレビに向けているか(アテンション指標、注視度)の2つ。さらに、視聴者の年齢や性別なども判定する。視聴率だけではわからない、テレビを見ている人のCMへの注目度を分析して、CM出稿量の調整や、広告表現(クリエイティブ)の改善につなげる。タイム枠、スポット枠での分類もできる。
サッポロビール ビール&RTD事業部メディア統括グループで、テレビの広告枠調達を主に担当する重政友紀氏は、「テレビCMはいかに効率よく出稿するかが勝負。インパクトの強さやスケールメリットはありながらも、予算は限られているのが実情だ。本当に見られているのか。とりわけターゲットがどのくらい注目しているのかがわかる指標は、出稿検討には欠かせない材料となっている」と話す。
なぜCMから目を離せなかったのか
セミナーで紹介したテレビCMは、2021年1月からオンエアした「サッポロ GOLD STAR 超えていく篇」(15秒)。発売時からイメージキャラクターに起用している俳優の窪田正孝さんが、サッポロビールの象徴である五芒星を模したギターをかき鳴らし、「GOLD STAR」を一口飲んで、「うまい!」と力強く叫ぶというシンプルな構成のCMだ。
これを、TVISION INSIGHTSが提供するデータをグラフなどにまとめ、ひと目で把握できるよう視覚化したツールで見ると、15秒間に注視度のピークが3回あることがわかった。
通常テレビCMは、流し始めから流し終わりまで、ずっと注目されることはない。しかし、「GOLD STAR」の場合は、まず冒頭の効果音で1回。さらにテンポのいいカット割りで視線を切らさせないようにしつつ、最後に窪田さんの一言で、もう一度山ができていた。
重政氏は「この注視度を保てている点が、昨年と比べてもより改善できた点」と話す。
「当社ではTVISION INSIGHTSのダッシュボード『Telescope(テレスコープ)』をバイイングチームだけではなく、ブランドチームとも共有して、定期的に分析し、議論する場を設けている。CM表現は感覚的なところも多く、音声や効果音が大事というのはわかっていても、具体的にどのように貢献しているのか。これを可視化して、メンバー間で共通認識を持てるのが大きい」(重政氏)
データを蓄積して来期へつなげる
TVISION INSIGHTSでは2016年から、地上波6局7チャンネル、東京メトロポリタンテレビジョン、BS放送の全番組とCMログを対象に、〈視聴質〉のデータを毎日24時間、毎秒単位で取得。そのデータをまとめた「Telescope」では、自社と競合ブランドのCMの比較や、カテゴリー平均値との比較、シェア・オブ・ボイス(カテゴリー中の全出稿量のうち、自社ブランドが占める割合)を把握などができる。ターゲットを絞って滞在度や注視度を計測することも可能。
「こうしたデータや、TVISION INSIGHTSから上がってくるレポートを基に、ブランドチームと膝を突き合わせて議論する場をことしに入ってから定期的に設けている。一つひとつのキャンペーンは短期かもしれないが、蓄積することで来期以降のメディア戦略に役立てたい」(重政氏)
「サッポロ GOLD STAR」の2020年の実績は487万ケース(大びん20本換算)で、上方修正した目標を超えて達成。2021年はさらに約3割積み増した624万ケースを狙う。
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