「同じ顔で話している感じがしなかった」
2010年8月に代表取締役 太田睦さんが創業したギフティ。eギフトの生成から流通まで一貫して提供するギフト事業を中心に、地域活性化のためのプラットフォーム「Welcome! STAMP」や、顧客のロイヤリティを高めるサービス「giftee Loyalty Platform」などと事業を拡大してきた。2019年9月には、東証マザーズに上場。そのすぐ後の12月、CCOに長谷川踏太さんが着任した。その背景を太田さんはこう話す。
「長いことマネジメントレベルからデザインのできる人を探していました。というのも、僕を含む4 人のボードメンバーには、デザインにルーツを持つ者がいないんです。それゆえ経営としては成立していても、自社のプロダクトやサービスが同じ顔で話している感じがしない。つまり、すべてのメッセージやブランドの人格に一貫性がないというのが課題でした」。もちろん、それまでも同社にはデザイナーが在籍していた。ただCtoC 向けの販売サービス「giftee」の運営に必要なデザインの側面が大きく、企業全体のクリエイティブを統括するポジションは不在だったという。
社内のデザイナーを育てるか、外部のコンサルティング会社に頼むか。さまざま考えを巡らせていた2019年9月、長谷川さんがnote に投稿した「W+K 東京を退職しました。」という記事が太田さんの目に留まった。長谷川さんは、ソニー、イギリスのクリエイティブ集団「TOMATO」、そしてWieden+Kennedy Tokyoのエグゼクティブ・クリエイティブディレクターと、クライアントや広告会社などさまざまな立場を渡り歩いてきた経歴を持つ。すぐに長谷川さんに連絡をしたという。当時を長谷川さんはこう振り返る。
「実はギフティのことは、創業した頃のことしか知らなかったんです(笑)。ワイデンにいた頃、とある営業が創業期のデザインに少し携わっていて。アイデアのある会社だなぁと思いつつもその後のことを全然知らず、上場の話などを聞いて驚きました」。しかし、前職で感じていたことが、ギフティへのジョインを後押しした。
「クライアントの課題解決のためには、広告が常に最適解であるとは限らない、ということです。CMをつくるよりも、プロダクトやサービスの改善が急務な場合もありますが、広告会社が接するのは基本的にはクライアントのマーケティング部や宣伝部の方々だけ。目的に対しての手段をゼロから考えることに興味がありました」(長谷川さん)。
互いの意向が合い、長谷川さんはCCOとしてギフティに入社することとなった。
「揺れまくる船」の中で、どうクリエイティビティを発揮するか
ひとえに「CCO」といっても、狭義のデザインの統括、自社広告などコーポレートのクリエイティブの担当など、その定義はさまざまだ。ギフティの場合は「クリエイティブに関わる全て」を意味し、コーポレートメッセージの整理、自社プロダクトのネーミングやロゴのデザイン、UI/UX の監修、また社員の働き方のデザインなどその領域はかなり広い。さらにベンチャー企業らしく、多数の事業が同時に走り、猛スピードで変化していく。
「求められるのは『曖昧力』だと思う」、と太田さん。「変わることが大前提なんです。そのため、曖昧さを許容し、しなやかに変化していく器量がないと、ベンチャー企業という揺れまくる船には乗っていられないと思います」。長谷川さんも続けてこう分析する。
「クリエイティブの世界にいると、永久に変わらないルールなどないと気付かされますよね。正しさは時代ごとに変わるし、ルールに沿うことが企業の成長につながり続けるかもわからない。広告会社にいると、太田さんの言う『船の揺れ』が見えなかったんですが、今は内部から見ることができる。時に揺れから新たな価値が生まれることもあります。そのあたりの感覚が、太田さんと合ったのだと思います」(長谷川さん)。
(……この続きは7月1日発売の月刊『ブレーン』8月号に掲載しています)。
本記事のこの後のTOPIC
・ギフティ入社後、長谷川さんは同社のクリエイティブにどう関わっていった?
・太田さんが見据える、ギフティのデザインの今後。