7月17日から、神奈川県・茅ヶ崎市美術館にて「human nature Dai Fujiwara 人の中にしかない自然 藤原 大」が始まる。
藤原氏は2008年、(株)DAIFUJIWARAを設立し、湘南に事務所をかまえた。以降、コーポレイト(企業)、アカデミック(教育)、リージョナル(地域)の3つのエリアをフィールドに、現代社会に向けた多岐にわたる創作活動を続けている。近年は、独自の視点を活かし、Google、資生堂、日立製作所など企業のオープンイノベーションにおける牽引役としても活動中だ。そんな藤原氏は、アート、サイエンス、デザインの領域をつなぎ、身体空間(フィジカルスペース)と電子空間(サイバースペース)の融合が進む現代社会について、早い段階から思考し表現を続けている。
国内の美術館で初の個展となる本展では、掃除機を用いてモンゴルの草原やニューヨークの地下鉄で収集したものを素材にしたテキスタイルでゴミの概念の変換を試みる作品や、描く手段の拡張としてドローンなどの電子機器を使い布にパターンを描いた作品。自然界の色を採取し色見本をつくる独自の手法“カラーハンティング”による「湘南の色」をもとにデザインした江ノ電の車両や、無印良品、カンペールなど国内外の企業と手がけたデザインについてもあわせて紹介する。本展のため茅ヶ崎で集めた素材でつくるセーターや、茅ヶ崎のシンボルともいえる烏帽子岩をカラーハンティングした茅ヶ崎シャツも初公開する。
「今回背伸びして、今から100年後の社会を見つめた。私がイメージするのは、色に意味がたくさん付帯されているカラーボキャブラリーな小宇宙。それは、人の関与が必要な自然そのものと人工物の境界が曖昧で、人にしか見えないトポロジカルな意味空間。なんとも不思議な自然だ。そこには、ゴミという言葉が社会に存在しなくなっているだろうか? そして、人々が今の狭い倫理観を覆すほどハツラツと生活できるハッピーな世界なのか? これらのクエスチョンマークを起点に、人の中にしかない自然を表現したい」と、藤原氏。
また、本展のキービジュアルを、資生堂とフリーランスの両軸でクリエイティブディレクター/グラフィックデザイナーとして活動する花原正基氏と写真家 瀧本幹也氏が手がけた。ビジュアルのモチーフになっているのは、茅ヶ崎を代表する烏帽子岩だ。
「茅ヶ崎を代表する烏帽子岩の撮影を、藤原大氏から依頼されたのが2020年3月でした。『自然は人の中にしか存在しない対象』という藤原氏の考えを、自分なりに解釈しようと想像をめぐらせていた時に、未曾有のパンデミックが世界中に広がっていきました。それは自分にとっても大きなうねりとなり、今回の作品に影響を及ぼしたと思います。『いわゆる普通の風景写真ではない』、あたかも細胞を顕微鏡で観察する様な、または、この地球を俯瞰する様な視座で、見慣れた烏帽子岩を撮りたいという考えに行き着きました。これまでに見たことのない、遥か上空の宇宙から地球を観察したようなイメージが湧き上がったのです」と、瀧本氏。
「藤原大氏より『人の中にしかない自然』というテーマを伺った時、人と自然の関わりを考えていくことに非常に興味をそそられました」と、花原氏。
「しかし、それをどう咀嚼すればその概念を表現するようなデザインができるのか、まずは自分の中にある、自分の考える自然と向き合うことが課題でした。すぐにその答えが見つかるはずもなく考えを巡らせていたところに、瀧本幹也氏が撮影した烏帽子岩の写真が届きました。まさに大自然を切り取ったものでありながら、不思議とミクロの世界の細胞ようにも見える。この写真を受けて、これまで曖昧だった考えの輪郭が明確になりました。写真をピクセルになるまで拡大し、その中に潜んでいる色を3色抽出することで『人と自然』を想起させる色を取り入れました。赤いタイポグラフィ(HumanとNature)は細胞の間を循環する血の流れのように生き生きと鼓動を打ち、また波と呼応するゆらぎをイメージしながら制作しました」(花原氏)
会期中にはトークイベント他、8月中旬には藤原による研究活動の一環として湘南エリアでカラーハンティングを実施する。展示は、9月5日まで。
「human nature Dai Fujiwara 人の中にしかない自然 藤原 大」
会期:7月17日(土)~9月5日(日)
会場:茅ヶ崎市美術館 エントランス、展示室1・2・3
時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日(ただし8月9日は開館)、8月10日(火)
料金:一般800円、大学生600円、市内在住65歳以上400円