【前回コラム】「Facebook Japanと神戸市の事業連携につながった、「顔が見える」関係づくり」はこちら
こんにちは、神戸市の長井伸晃です。このコラムでは、神戸市の「つなぐ課」という、自治体では異色の遊撃部隊に所属していたころの取り組みを通じて、官民連携のヒントや、公務員としてのクリエイティブな働き方のヒントなどをお届けしています(裏テーマは、アドタイ読者の皆さんに公務員をもっと身近に感じてもらうことです)。
前回のコラムでは、
・仕事や活動のベースとなるつながりづくりにFacebookを活用
・民間企業や地域の方々、全国の公務員と5000人を超えるつながりが(!)
・そこから神戸市とFacebook Japanとの事業連携といった新たな価値が生まれた
……というお話をしました。
今回はそのつながりの中から、実際に実現したプロジェクトをピックアップ。
「異分野のものをかけ合わせると、予期せぬ新たな価値が生まれることがある」ということに気づかされた事例をご紹介したいと思います。
「データ」×「匠の技」→「AI特製カレーパン」
ひとつめは、「データ」と「匠の技」をかけ合わせてつくった「AI特製カレーパン」。2020年4月に発売し、神戸新聞やYahoo!ニュースなどでも取り上げられました。
企画の発端は、私が2019年につなぐ課に異動になる前の2018年にさかのぼります。
2018年、神戸市はヤフーと「データドリブンな市政課題解決に関する事業連携協定」を結びました。この協定の目的は、「データドリブン(データにもとづく)な課題解決とそれを担える人材の育成を図る」こと。簡単に言うと、神戸市とヤフー、それぞれが持つデータをかけ合わせることで、市の取り組みの効果を可視化したり市職員のデータ分析のリテラシーを高めたりしていこう、というものです。
その協定の締結に関わった私は、データの面白さを実感していました。そこで19年につなぐ課に異動してからは、何か別のものと「つなぐ」ことができないか……と思い、ヤフーの方と相談。徐々に「データとは対極の位置にあるように思える『匠の技』とを掛け合わせたらどんな化学反応が起こるのか」を知りたくなってきました。
そして具体的なきっかけとなったのが、私も運営委員のひとりとして関わっている「078KOBE」という多分野を横断したイベント。そこでの取り組みを通じ、データを用いて、神戸を代表する食文化のひとつであるパンを開発してはどうか、と思いついたんです。
早速、地元の老舗ベーカリー「ケルン」の壷井豪社長(もちろんFacebook友達のお一人)に相談。快くそのチャレンジを引き受けてくださった――というのが経緯です。
実際、どのようにつくっていったのか。
パンに関するアンケートデータや画像解析・機械学習ツールを活用し、人が好むパンの要素を抽出してくれました。
上記のデータをもとに、壷井社長の匠の技で「AI特製カレーパン」として体現。「078KOBE」でのカンファレンスで、その開発秘話とともに試作品を披露しました。参加者の方々にご好評いただき、実際の店舗で期間限定で販売されるまでに至りました。