インターナルコミュニケーション新時代!何を目指し、どう実現するか

リモートワークの常態化で、インターナルコミュニケーションは広報の急務になっています。従業員が会社に期待する報酬も多様になる中で、行動変容につながる社内コミュニケーションの在り方とは。広報が取り組むべき打ち手を考えます。
*本記事は7月30日発売の『広報会議』の転載記事です。

サインコサイン
代表取締役
加来幸樹(かく・こうき)

1983年福岡県生まれ。九州大学芸術工学部卒業。2006年にセプテーニに新卒入社し、デジタルマーケティングのクリエイティブ領域を中心に様々な顧客の課題解決を支援した後、2018年にサインコサインを設立。「自分の言葉で語るとき、人はいい声で話す。」を理念に掲げ、企業や個人の理念/ブランドのネーミングやタグラインなど覚悟の象徴を共創する。また、企業と個人それぞれの理念の重なりの認識を通じた、より良いパートナーシップの動機形成にも取り組んでいる。宣伝会議「インターナル・コミュニケーション実践講座」講師。

 

これからのインターナルコミュニケーションの在り方を考える上で、まずは現代における会社と社員の関係性の変化を考える必要があります。具体的には両者がそれぞれに期待することの変化について考えましょう。

会社と社員の関係性の変化

まず会社が社員に期待すること。終身雇用や年功序列といった制度が崩壊する一方で、希少で価値の高いスキルや経験を有する人材の獲得競争は激化し、報酬も高騰しています。「会社が社員に期待する働き方のハードルは、より高く複雑になっている」と言えるでしょう。

そして社員が会社に求めることも変化しています。副業などがより一般化してきたことで、個人の収入のすべてが会社の給料というわけでもなくなりつつありますし、先行き不透明な時代だからこそスキルアップやキャリアップを見据えて一社目を選択する学生も増えています。ますます不確実性の高まる時代の中だからこそ、一人ひとりの生き方も多様になってきているのです。「社員が会社に期待する報酬内容は、その種類も大きさも多様になってきている」とも考えられる現象が起きています。

会社の社員への期待は複雑化し、社員の会社への期待も多様化する。このようになってくると従来のように労働力に対して対価を支払うという単純な関係ではなくなってきます。会社と社員は、より対等にそれぞれが求める価値やリソースを交換するパートナー関係へと、その関係性をアップデートするべき時を迎えています。

パートナーシップ構築のために

つまり、インターナルコミュニケーションという活動の目的も、会社と社員が真のパートナー関係になるためと考えることができます。では、パートナーシップを構築するために必要なことは何なのか。それは「理念」の重なりを実感して動機にすることだと、私は考えています。

理念とは、すべての活動や選択の動機・基準となる羅針盤のようなものです。新型コロナウイルスの感染拡大に端を発する様々な大きな変化も相まって、様々な常識が覆り、様々な新しい選択肢が生まれ、正解のレールが見えなくなるとともに、絶対のルールもなくなりつつあります。

このような状況の中でも自分らしく選択をし続けるためには、この「理念」に従うほかありません。個人がどこで働くのか? 会社が誰を採用するのか? いずれの問いにも確実性の高い正解はなく、無限の選択肢があるからこそ、何よりもお互いの「理念」の重なりを動機としたパートナーシップを重視するべきであり、その状態のことを良いパートナーシップ関係と呼ぶべきではないでしょうか。

出所/筆者作成

企業の理念と個人の理念

企業のすべての活動や選択の動機・基準となる羅針盤「企業理念」があるように、一人ひとりの社員にも自分という個人のすべての活動や選択の動機・基準となる羅針盤「個人理念」があるはずです。かねてより「企業理念」の重要性は様々な場面で言われていますが、これからは「個人理念」の必要性と重要性もますます高まっていくと考えています。前述のように会社と個人の関係性が大きく変化する中で、個人も自分自身の仕事や人生を経営していくという感覚が求められるようになるからです。

会社と個人それぞれの理念の重なりを動機として、それぞれが対等なパートナー関係となること。それこそが正解のない時代の中で目指すべきインターナルコミュニケーションのゴールです。ここからは、その実現のための打ち手を検討する中で意識してほしい3つのポイントについてお伝えしていきます。

インターナルコミュニケーションのポイント1

インプットだけでなくアウトプット

まずひとつ目のポイントは、インプットだけでなくアウトプットを手段として心掛けるということです。インターナルコミュニケーションや企業理念の浸透の手段としては、とにかく伝える、目につく位置に掲示するなど、いかにインプットするか? に重きが置かれがちですが、人の意識や行動を変えるために重要なのはインプットよりもアウトプットです。

図表1は私が個人的にOFMIサイクルと提唱している、個人の成長と学習の過程を表現したものです。価値を生み出す具体的な行動や対外的な発信といった「アウトプット」をすることにより、その行動や発信に対する評価やリアクションなどネガポジそれそれの「フィードバック」を他者から受け取ることができる。そして成長や自己実現などに向けた「モチベーション」に変化が発生し、より能動的に様々な知識や情報の「インプット」を心掛けるようになり、さらに「アウトプット」の質が高まっていく……というサイクルを表しています。

図表1 モチベーションを上げるOFMIサイクル

出所/筆者作成

そして、このサイクルは「アウトプット」からしか始めることができないという、重要な特徴があります。つまり企業理念に関する意識の変化や前向きなインプットを求めるためにも、まずはアウトプットの機会をつくる必要があるということです。実際に、企業理念に関連したプレゼン型の研修を実施したり、評価プロセスの中で対話の機会を設けるなど、会社の理念を一人ひとりの社員が解釈して発信する機会を提供する企業も増えてきているように感じます。

インターナルコミュニケーションのポイント2

ストラテジーだけでなくストーリー

理念に納得してもらうにはその「ストラテジー」が正しいことを証明する必要がある、と思われがちですが、それよりも「ストーリー」で届ける必要があるということが2つ目のポイントです・・・・・・

——本記事の続きは『広報会議』2021年9月号に掲載しています。

<この後解説の項目>
・インターナルコミュニケーションのポイント②「ストラテジーだけでなくストーリー」
・インターナルコミュニケーションのポイント③「オンラインだけでなくオフライン」
・社員ステージごとの施策案
・各メディアを活かした具体例 など

『広報会議』2021年9月号

 

【特集】
“一体感”が崩れる、その前に
インターナル広報

GUIDE 社内コミュニケーションの打ち手
インターナルコミュニケーション新時代
正解がない中で何を目指し、どう実現するか
加来幸樹(サインコサイン 代表取締役)

CASE1 エンゲージメントを高める仕組みづくりのポイント
現場の裁量権を上げ、機動性の高い組織へ
トップの発信量とボトムアップの改革
シスコシステムズ

CASE2 新しい働き方推進企業のコミュニケーション施策
モバイルワーク下の一体感醸成
心理的な距離を縮める工夫
カルビー

CASE3 閉塞感を感じさせないエンゲージメント施策
休業期間を経て強化する社内広報
従業員の主体性をどう引き出すか
スターバックスコーヒー ジャパン

CASE4 エンゲージメント向上がひいては新商品開発に
あえて“しない”施策で
自走する社員を育てる環境づくり
ワークマン

CASE5 アプリもあり、月間9割のログイン率も
タイムリーに顧客の声を共有する社内報
企業文化がさらに根付く
兵庫ヤクルト販売

GUIDE
広報担当者のための
スマホで簡単! 動画撮影トレーニング
本田 裕太郎(スリーダブリュー代表取締役)

DATA インターナルコミュニケーションの“いま”を編集部が調査
コロナで多様化する社内報の在り方
飽きられない工夫は継続して必要に

GUIDE ありきたりな誌面が劇的に変化
お悩み相談 社員の心をつかむ
社内報作成の極意とは
足立区シティプロモーション課

組織を活性化するアイデア集
「社内報」コンテンツ、注目記事とその反響
アルプスアルパイン/ビレッジハウス・マネジメント
東京海上ホールディングス/中部電力/メイテック
堀場製作所/成田国際空港/ファミリーマート/川崎重工業

企画から事後アンケートまで
「社内報」制作の舞台裏

社員を巻き込む 社内報のつくり方 特別編
マクロミル

COLUMN コロナ禍でワークスタイルの変化にも対応
新たなウェブ社内報『KIRIN Now』
長期構想の達成に向け、情報の即時性高める
キリンホールディングス

GUIDE 企業と求職者のマッチングの質を上げる
社内コミュニケーションと密接にかかわる
「採用ブランディング」 情報開示のポイントは
深澤了(むすび 代表取締役 クリエイティブ・ディレクター)

COLUMN
コロナ禍で就活生は「情報量」が不足
「等身大」の社内が伝わるコンテンツを
マスメディアン

記者の行動原理を読む広報術 特別編
対社外も意識したコンテンツ企画で
記者の取材にも結び付けよう
松林 薫(ジャーナリスト)

 

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