時代というレンズを通して見える、ブランドの存在意義
そして3つ目の理由。それは「今、この時代に、自分たちのブランドが果たすべき役割は何なのか?」というブランドの存在意義、すなわち、このコラムのテーマでもあるブランドパーパスが見えることです。
「性の多様化が進むこの時代に、Pricelessの価値を掲げてきたカード会社として、何ができるのか?」「人々が貨幣を使わなくなってしまったこの時代に、造幣局として何ができるのか?」「行き過ぎた大規模農法によって生態系も農家も疲弊しつつあるこの時代に、オーガニックビールブランドとして何ができるのか?」。
このように、時代のレンズを通してブランドを見つめることで、よりハッキリとブランドの存在意義が見えることがあります。そしてこの「時代のレンズで見る」という行為こそが、ブランドパーパスを見つけ、定義する上で大いに役立ちます。特にマスターカードの“True Name”は、長年“Priceless”というブランドが大切にしてきた本質的な価値を、時代のレンズで見つめ直した結果生まれた、好事例なのではないかと思います(“Say”モノですが、ダヴの“Courage is Beautiful”もそうですね。「Real Beauty」x「時代のレンズ」です)。
さあ、なんだかカンヌの話ばかりになってしまいましたが、次回からは「ブランドパーパスを起点に、ストラテジーやアイデアを考える方法」に関して、もう少し突っ込んで書きたいと思います。
キーワードは、「まずWHYより始めよ」「ブランドパーパスは目的ではなく、起点に過ぎない」「パーパスは『つくる』のではなく『見つける』」、「強くなければ生きてはいけない。優しくなければ生きている資格はない」「パーパスの出口は、ソーシャルグッドとは限らない」などなど。
それでは、また次回!
*カンヌ余談。上ではゴチャゴチャ言っておりますが、ひとりの消費者として好きなものは全然違います。極めて個人的でどうでもよい話ですが、ニルヴァーナの“Unplugged in New York”が「人生のベスト10アルバム」のひとつにランクインしている私にとって、“Where did you sleep last night?” がバックに流れる、ディーゼルのムービー“Francesca”には無条件にシビれたし、かれこれ5年以上ファストフードチェーンのハンバーガーを断っていた私も、“Moldy Whopper”を見てからは、バーガーキングのワッパーだけは安心して食べまくってます(ちなみに、ファストフードチェーンのバーガー断ちをしたきっかけは、“Moldy Whopper”の元ネタと思われる「某チェーンのバーガーは合成保存料が添加されまくっているので、何日経っても全然腐らない」という、戦慄の実証ムービーを見たからなのでした)。