大八監督のむちゃぶりに錦戸さんも困惑?!『羊の木』撮影秘話
中村:まずお二人といえば、さっきもお話に出てましたけど、2018年に公開した『羊の木』。お便りもこれ関連が多くてですね。
権八:そうだよね。その2人のタッグだから。
中村:1個だけ読みますと、茨城県のラジオネーム、はるちゃん。
<お便り>
お二人に質問です。今振り返ってみて、映画『羊の木』で印象に残っていることや、当時の思い出・エピソードなどがありましたらぜひ教えていただきたいです。
錦戸:当時の思い出・エピソード……。撮影してたのって……
吉田:2016年の終わりぐらい。
錦戸:そうですよね。5年前か。覚えてます?
吉田:地方ロケで、富山に1カ月ぐらいみんなでいたんですよね。撮影っていつもそうですけど、そんな劇的な波乱万丈はなくて、1日1日スケジュールを消化していく感じで。だからすごく充実した1カ月を淡々と過ごして、結果、撮影が終わったっていう印象だったよね。
錦戸:はい。
権八:(作品は)全然淡々とした内容じゃなかったけどね。
吉田:内容はね。だけど淡々とつくるじゃないですか、劇的なものでも。意外と主演俳優と監督って撮影以外のことを話す機会ってあんまりないんですよね。
権八:そうなんですね。
錦戸:そうですね。クランクインの前に1回ご飯食べに行ったぐらいで。それ以外は、つかず離れずじゃないですけど、一定の距離がありましたね。
吉田:撮影現場で会って、また現場で別れて、次の朝また現場で会う。ほぼ毎日会ってたから「こういう人なんだ」「こういうスタンスの人なんだ」って、仕事を通じて分かっていく感じはきっとあったんだと思う。
権八:そう言われてどう?
錦戸:もちろん僕も一生懸命やって、自分の中での財産になった時間ではありました。……水中の撮影があったんですよね。プールを使って僕が浮かび上がってくる撮影をしたいって大八さんが言って。水深5mぐらいの深めのプールで……
吉田:飛び込み用のプールね。
錦戸:下で待ってて、浮かび上がってくるんですけど、どうしても泡が出てくるじゃないすか。下で待ってるわけやから、水中で息もできひんし。「泡を全部出し切ってから、ちょっとしてから上がってこい」って言われて。「この人何言うてるんやろ」と思いました(笑)。
一同:(笑)。
錦戸:「死んでまうわ」思いながら(笑)。それは覚えてますね。しかも、水中ってドキドキするじゃないですか。パニックっぽくもなるし。必死でやったけど、出来上がりをみたら、まあまあ暗くてあんま分かんなかったですよね。
吉田:そんなことないよ。
錦戸:いやいやいや。
権八:そっか、夜のシーンだから。
吉田:夜の海に飛び込むところをプールで撮ったんですよね。でも明るかったら変ですよね、夜の海だからね。
権八:もちろん。
錦戸:でも「泡のひとつや2つぐらい許してくれたっていいのにな」って(笑)。
吉田:撮影のときは、ちょっとおかしなモードに入っちゃうときありますよね。
権八:そうなんだ。完璧主義っていうことですか?
吉田:完璧主義っていうか……。「泡が出てる。泡が出てきたら最初から下にいるってバレちゃう。だから『泡出さないで!』」って。
一同:(笑)。
権八:作品の優先順位が。
吉田:水の中にいる彼の状態よりも、「泡を消したい」ってことが1番になっちゃう。ちょっとおかしいですよね。後で言われて「そんなこと言った?」って、そういうことはよくあります。
錦戸:真っ直ぐすぎるがゆえですよね。そんな感じでした。