“音楽のように映画をつくりたい”という吉田監督。「錦戸くんとは話が早い」(ゲスト:吉田大八、錦戸亮)【後編】

錦戸さんは翻弄される役がお似合い?!

中村:改めて大八監督の言える範囲で、あらすじやどんなストーリーかを教えて下さい。

吉田:彼(錦戸)がファミレスで普通に友達と話をしていて、「ちょっと昨日こんな夢見たんだけどさ」みたいな、本当にありがちな一コマから始まります。夢の話を彼がするんですよね。それが最後どうなっちゃうかみたいな話です。もちろんただ単に夢を話してるだけじゃ終わらないんですけども。

中村:「こんな夢あるよね」「悪夢なのかな?それともいい夢なのかな?」みたいな。“夢あるある”の原風景を行ったり来たりしながら、「あっ!」っと、びっくりする。

吉田:だいたい人の夢の話ってそんな面白いことないじゃないですか(笑)。

権八:そうですね。

中村:夢ってオチないですからね。

吉田:だけどそれでもね、夢の映像ってみんな撮りたいんですよね。自分の夢の話はしたいから。僕が短編の中の夢を実際に見たわけじゃないけど、そういう意味ではすごい楽しかったですね。あんまりできない贅沢をさせてもらった。

権八:確かに。

吉田:撮影の3日間は本当に幸せでした。「何やってんだ俺」って思って。

権八:夢だから、何が起きてもいい。

吉田:そうなの!!

権八:わはは!(笑)

吉田:「監督これどうしてこうなるんですか?」って聞かれても、「うん、でも夢だからね」って。

一同:(笑)。

吉田:錦戸くんなんか、頭から聞いてこないですよ。「なんでこうなのか」って。『羊の木』(2018年)のときもそうだったんだけど、基本質問してこないです。「(台本に)書いてあるんだから、そうしたいんでしょ」っていう感じ。スタッフはいろいろ用意しなきゃいけないから「これどういう意味ですか」「こういうつながりですか」って聞いてくる。「いや、夢だからいいんじゃない?」って(笑)。そんなことってさ、映画でもCMでもなかなかできないでしょ。だからこれはいいなと思っちゃった。

権八:僕も観てちょっと思っちゃったよ。「これやりたいな」って(笑)。

吉田:そうでしょ?みんなやればいいと思うよ。

権八:やっていいのかな?(笑)

吉田:夢の話をするときの自分のテンションの高さと、聞いてる相手の落差って何だろうといつも思ってて。もうちょっとうまく人を巻き込めたら最高に楽しいじゃない。

権八:夢だから何があってもいいし、どこまでも無軌道に行っちゃってもいいんだけど、でもギリギリの、大八さんなりの美意識がありますよね。「これ以上変にはしない」っていう(笑)。

吉田:バランス取っちゃうね。

中村:あと「夢あるある」みたいなのを感じました。「確かに夢ってそんな感じだよな」みたいな。

権八:このストーリーは最初から錦戸亮をイメージして書いてるんですか?

吉田:そうですね。だから当て書きですよね。『羊の木』と似てるところがあるかもしれない。つまり、錦戸くんがいろんな経験をして、そのときの表情を見たいっていうのがきっとどこかである。

権八:「えっ?」っていう顔とか、最高だよね。

吉田:写真で送ってくれたカットですか?わざわざ撮って送って来てくれた(笑)。

錦戸:僕にも昨日きました(笑)。

権八:2人に送ってる。

吉田:確かにあの写真見ると「ああ、こんな顔してたんだ」って思うよね。

権八:すごい良い顔してるのよ。『羊の木』も『No Return』もどちらも、主人公が翻弄される話じゃないですか。「だから翻弄されんのうまいな」って(笑)。似合うよね。

錦戸:なんで(笑)。

吉田:それだけじゃないんだけど、今回も結局そういう話をつくっちゃいましたね。でも、それがすごく魅力的だし、そういう顔を見たいんですよ、僕もきっと他の人も。

権八:そうなんですよね。

次ページ 「大八監督から見た役者「錦戸亮」」へ続く

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