2021年10月に、奈良と神奈川で2つの芸術祭が開催される。
ひとつは、奈良・奥大和で開催される芸術祭「MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館」。吉野、天川、曽爾の3つのエリアに、それぞれ森、水、地というテーマを設け、最大5時間かけて歩いてめぐる芸術祭である。自然に包まれながら、アート作品を鑑賞・体験でき、地域によっては世界遺産の中を自分の足で歩くエリアもあるという。
もう一つは、神奈川・猿島で開催される芸術祭「Sense Island 感覚の島 暗闇の美術島」。会場となるのは、横須賀中央からフェリーに乗ってわたる無人島・猿島。開始時間は、日没後だ。そこで来場者は携帯電話を封印し、暗闇の中で自分の感覚を研ぎ澄ませて島の自然と作品と対峙することになる。そんな本芸術祭の今年のテーマは、「音」。
いずれも他にはない体験ができる、新しいかたちの芸術祭と言えるだろう。この2つの芸術祭をプロデュースしているのは、パノラマティクス主宰/アブストラクトエンジン代表取締役 齋藤精一氏だ。齋藤氏のもと、それぞれの地域の人たち、キュレーターやアーティストが共に、それぞれの芸術祭をつくりあげている。
プロデューサーである齋藤氏が代表を務めていた株式会社ライゾマティクスは、2020年10月にアブストラクトエンジンへと社名変更し、「ライゾマティクス」と「パノラマティクス」の2つのチームを設置した。その際に、齋藤氏は次のように語っている。
「設立10周年を期に一度自分とライゾマティクスのルーツを考えました。その上で社会をより良く変えるために、コンテンツや表現がもっと社会のエンジンになるために考えた結果、見出した自分なりの答えが、“建築・都市への回帰”でした。現在は都市開発や地方活性化、行政とのクリエイション、ICT・スマートシティ実装などに関わり、社会実装の難しさと取り組む意義が見えてきました」
「MIND TRAIL 奥大和」は2020年にコロナ禍で初開催し、今年で2回目を迎える。2019年に立ち上げ、コロナ禍前に一度開催した「Sense Island -感覚の島- 暗闇の美術島」も、今年が2回目となる。「Sense Island」について、齋藤氏は次のようにメッセージを寄せている。
「人は昔から自然と共生していました。そこから文明は生まれ、文化となり発展し続けています。しかし、ときに人は人間の進化の速度が遅いがゆえに、自分たちの環境を強制的に変化させ、その行為によって、ときに自然を滅ぼし、多くの過ちを引き起こしてしまいました。今の時代は「人間中心」を再定義する時だとも言われています。
Sense Island -感覚の島- では、唯一無二の存在である自然島 猿島だからこそ、知らずのうちに人工的に作ってしまった感覚を取り払い、テクノロジーや時間の概念を取り払い、猿島やそこにある自然の文脈を、そしてその文脈を感じるために自分自身と向き合うような作品や体験を通して、我々が失ってしまった“感覚”をもう一度取り戻す試みを行います。これまでの生活が一変した今、もう一度自分と自分の感覚を、猿島で対峙させてほしいと考えています」
それぞれの地域の特性をいかした齋藤氏プロデュースの2つの芸術祭。いずれもそこでしかできない体験を得ることができそうだ。どちらも会期中に関連イベントの開催を予定している。
■MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館
会期:
2021年10月9日(土)~11月28日(日)
会期中無休
会場:
奈良県吉野町、天川村、曽爾村
入場料:
無料
キュレーター:
西尾美也、菊池宏子、西岡潔、指出一正
参加アーティスト:
井口皓太、岩田茉莉江、上野千蔵、岡田将、KIKI、覚和歌子、金子未弥、菊池宏子+林敬庸、木村充伯、国本泰英、黒川岳、熊田悠夢、幸田千依、小松原智史、齋藤精一、坂本大三郎、菅野麻依子、鈴木文貴、力石咲、長岡綾子、中﨑透、西尾美也、西岡潔、野沢裕、三原聡一郎、山田悠
■Sense Island 感覚の島 暗闇の美術島
会期:
2021年10月30日(土)~12月19日(日)
会期中の金土日および祝日と11月22日(月)
会場:
猿島一帯
入場料:
未定(9月初旬発表予定)
参加アーティスト:
井村一登、小野澤峻、忽那光一郎、筧康明、齋藤精一、中﨑透、細井美裕、mamoru、毛利悠子ほか予定。
タイアップアーティスト:
博展、ArtSticker(アーティストは後日発表)