「ブランドが未熟に見える」日本市場
前回のコラム「日本のブランドロゴにAppleのようなシンボルがないのは、なぜか?」では、なぜ日本企業のブランドロゴには文字を使ったものが多いのかを考えました。
結論としては日本のブランドに視覚的要素が少ないわけではなく、歴史的に日本企業が海外進出していた歴史的な背景があることと、グローバル市場の競争がそもそもアルファベットによる音声中心主義であることがその理由ではないかとの考えを示しました。もちろんデジタル化によってふたたび視覚的なシンボルに回帰していく流れにあり、これも合わせて歴史的な変化だと言えます。
このような海外と日本のマーケティングやブランディングの戦略の比較は、ロゴに限らず、実務の現場で日常的に行われていますが、たいてい「日本がいかに他の国と違っているか?」の主張が多いように思います。特に外資系企業のマーケターたちは、本社のトップダウン的な方針に対して「日本市場の特別さ」を訴えで、自らのローカル主導のマーケティング施策を売り込む機会も多いでしょう。
実際、日本市場の特殊性については、外資系企業も十分に調査したうえで、それを自覚して参入することが多いのですが、必ずしもすべてが成功するわけではありません。失敗する原因のひとつに、日本では表面的にはブランド間の競争が未熟に見えることがあると思います。しかしながら、製品の品質やサービスに関する日本人の要求レベルは非常に高く、このあたりが市場カテゴリーの成熟度について外資系企業が見誤る要因のひとつのように思えます。