「お前は何ができるんだ?」という部下の視線 実力で示すことが求められる
その後、日本に帰任し、海外マーケティング本部で、北米の電子レンジと掃除機のマーケティング・営業を4年間担当しました。日本の事業部や現地のマーケティング担当者と議論しながら、商品を売るためのマーケティング戦略や営業戦略を立てる仕事です。
北米市場を担当した際は、インドネシアでは感じられないような大量消費社会のダイナミックさを見せつけられました。皆さんもご存じのWalmartやCostcoなどの巨大量販店との定番商談に行くと、他企業の担当者と同じ待合室で自分たちの出番を待ちます。どの企業も商品のサンプルを持ってきて、直前まで作戦会議をしながら待っています。待っていると、「Next, Panasonic!」と呼ばれて自分たちの番がくるのですが、部屋に入るとジーパン姿のカジュアルな格好をした若い購買責任者が足を組んで座っており、「What’s new?」「で、いくらなの?」「もう少し値下げできないのか」などと矢継ぎ早に聞かれます。一生懸命説明するのですが、なかなか聞いてもらえず苦い思いをしました。先方のバイヤーの態度に「このやろー」と思うこともありましたね(笑)。
ただ、提案が受け入れられてひとつでも定番が採用されると、一気にアメリカ全土に展示され、年間何十万台という販売に繋がります。アメリカという国のスピード感、ダイナミックさを肌で感じられ、いま思えばエキサイティングな体験でした。
その後、28歳の時に2度目のインドネシア赴任が決まり、再びインドネシアへ。白物家電の部門責任者として、①エアコン、②冷蔵庫・洗濯機、③スモールアプライアンス(炊飯器やミキサー、掃除機、ヘアドライヤーなど)、④ウォーターポンプ・ファン・換気扇の4つのマーケティング部門を束ねて30名くらいの部下を持ちました。
いま考えれば、若造の自分によくやらせてくれたなと思います。初めてのマネジメント経験、部下のほとんどが年上という環境の中で最初は苦労しました。「お前は何ができるんだ?」という目で見られたのを覚えています。実力で示していかないと指示を聞いてくれないばかりか、陰口を叩かれます。なめられてはいけないと思って、部下と話す時はいつも事前に、こう言ってくるはずなのでこう説得して動かそう、などとちょっとした打ち合わせでも事前準備をしていました。そうした日々が1-2年続き、徐々にメンバーの信頼を得てチームを動かせるようになったと思います。
その後、また日本に戻って、海外マーケティング本部で新興国向けの冷蔵庫と洗濯機に関わり中国、北東アジア、インド、中近東、アフリカなど様々な地域のマーケティングを担当、また海外マーケティング本部全体の事業企画をやったりしました。ただ上司との面談の際には「また海外に行かせほしい」と常々言っていたこともあり、2018年から現在のベトナムに赴任することになりました。