(本記事は月刊『ブレーン』2021年9月号の特集、「海外アワードから読み解く 世界のクリエイティブ」に掲載したものです)。
「すべての時間をジェッツ色」に
今年6月1日に開催された「日本生命B.LEAGUE FINALS 2020-21」で優勝を果たし、現在日本一の男子プロバスケットボールチームが「千葉ジェッツふなばし」だ。設立10周年を目前にした2018年頃から、リブランディングの実施について議論がされてきた。
「選手やスタッフ、ブースター(ファン)などへのヒアリングを重ねてきました。その中で見えてきたのが、良い意味でスポーツの枠に収まらず、日常の中のエンターテインメントとして千葉県の人々に溶け込む千葉ジェッツの姿。その姿に近づくために、チームの在り方や見せ方を再定義する必要がありました」と千葉ジェッツふなばしのアートディレクター 新井匠さんは説明する。
新たに制定したスローガンは「PAINT IT JETS」。「千葉ジェッツに関わるすべての人の、すべての時間をジェッツ色に染めていく」という意思が込められている。「以前はフォントやカラー、ロゴの設定も出面によってバラバラな節があって。より多くの方々に浸透させていくために、デザイン面の整理は必須だと考えました」と新井さん。そこでロゴやブランドカラーを刷新し、オリジナルフォントも制定した。それらはすべて、新井さんをはじめとした社内のデザインチームで内製したものだ。
ロゴの三角形の形状は、千葉ジェッツを構成する「ブースター」「パートナー・地域」「チーム」という三者を表現。左上が「C」、残りの部分が「J」を示し、「J」の終点の右肩上がりの角度や鋭角な形状は、上昇と挑戦を表している。またメインカラーの赤を「チャレンジング レッド」と命名、ネット上や街中でも一目で千葉ジェッツが連想されるような、統一された見せ方を目指す。
意図を丁寧に伝えるしくみづくり
プロジェクト全体のコミュニケーションプランニングを担ったのは、電通デジタルのクリエイティブディレクター 竹田芳幸さん。スポーツチームのクリエイティブを多数手がけてきた。制作時はもちろん、その後の発表のフェーズにおいて竹田さんや新井さんが細心の注意を払ったのが「ファンの方々に受け入れてもらうこと」、そしてそのために言葉を尽くすことだ。実際Webサイトにはロゴを紹介するモーショングラフィック、コンセプトムービー、そしてリブランディングの背景まで、つぶさに説明がされている。
さらには今後のロゴやカラーの使用イメージまで記載。そのかいもあってか、6月7日の記者会見後には予想以上に好意的な反応が集まった。「すごく反応が良くて。ちょっと泣きました(笑)」と、竹田さん。
さらに、スタッフ向けに46ページにわたるブランドのガイドラインも制作。「外部のデザイナーなどと協業するとき、最初にシステムをつくれば、この資料ひとつでデザインの意図が伝わります。他のスポーツチームのブランディング事例を参考にしました」(新井さん)。
好調なスタートを切ったリブランディングプロジェクトだが、「ゴール」にはほど遠いと二人は口をそろえる。「既存のファンの方々に受け入れられつつ、継続的にファンを増やしていく役目を果たしていってほしい」と竹田さん。新井さんも「チームのさらなる成長のために、価値のあるブランドにすること。さらにそこからスポーツだけではなく日常にまで派生していけたら。スポーツをもっと夢のあるビジネスにしていきたいですね」と先を見据える。
スタッフリスト
全体
- 企画制作
- 千葉ジェッツふなばし+電通デジタル
- Pr
- 安藤希倫
- AD
- 新井匠、高良和忠
- D
- 森駿介
- C+コミュニケーションプランナー
- 竹田芳幸
- PM
- 舟久保昇礼
Web動画
- CD
- 竹田芳幸
- Pr+制作
- 駒木剛
- 演出+編集(コンセプトムービー)
- 安藤隼人
- モーショングラフィック
- 東方田桂伊
- 企画
- 森友佑
- 撮影
- 田中一成(コンセプトムービー)、小林茂太(インタビュー)
- 照明
- 若林茂一
- 編集(インタビュー)
- 早田晃誠
- CG
- 島猛
- 音楽
- 穴水康介
- 録音
- 戸村貴臣
- MIX
- 浅田将助
- NA
- 清水優譲
月刊『ブレーン』2021年9月号
【特集 海外アワードから読み解く 世界のクリエイティブ】
・2020ー2021年 時代を映す 世界の広告10選
・日本の受賞作品
・4人のクリエイターが見た世界の広告の現在 7つのポイントと潮流
・「社会正義」とどう向き合う? 国民文化で変わる広告表現
【TCC賞2021受賞作品発表】
【青山デザイン会議 日本で表現するということ】
アユミタカハシ、キリーロバ・ナージャ、マイク・エーブルソン
【SPECAIL】
・CAREER NAVI ネクサス
・注目のクリエイティブチーム 青空
・CONNECTION LAB レポート 三菱UFJフィナンシャル・グループ「赤い球の冒険~MUFG Soul Movie~」(監督:大澤健太郎)
・今夜も窓に灯りがついている. 星野舞夜
【PICK UP】
・千葉ジェッツふなばし リブランディングプロジェクト
・日本女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」
【連載】
・CMの裏側 キャスター/CASTER BIZ「レトロフューチャーオフィス」篇
・リサーチ主導のデザイン 文:山崎みどり
・プロトタイピング発想のデザイン 文:三冨敬太
・広告少年 松田翔太×吉兼啓介(博報堂)
・C-1グランプリ 岡部将彦(Que/Quest)×船引悠平(ADKクリエイティブ・ワン)
・仲畑広告大賞
・デザインプロジェクトの現在 柿木原政広、木住野彰悟
・今月のブックマーク 藤原麻里菜
・STAND THE FLAG 宮崎県/愛媛県
・心に残ったプレゼン術 岡部
・名作コピーの時間 近藤雄介(電通デジタル)
・クリエイターおすすめのブック&マガジン 稲田ズイキ
・デザインの見方 小杉幸一
・SPECIALIST NAVI:キャスティング 中村裕之(ビーポップ)