“個を光らせたい”という課題に応える
東京・西新宿にある工学院大学のキャンパス。地下1階には学生向け多目的スペースが広がっている。グレイッシュな空間に設置された全長 12 メートルのショウケースでは、2021年に10周年を迎えた建築学部の企画展示が7月から始まった。本展示では建築設計事務所、生活・交通インフラ企業などで活躍する 6 人の卒業生が登場。キャリアに関する Q&Aと携わってきた仕事や設計図を展示している。
企画したのはビームスクリエイティブ。印象的なのは、ショーウインドウに施された「大学での学び、現地での経験。その繰り返しが自信を育む。」といった、卒業生の想いを表した6本のコピーだ。自然な表情を捉えたポートレートや実際の仕事とともに、高校生や在学生、その保護者らに、大学で学んだその先にある未来のキャリアパスをイメージさせてくれる。
編集を担当したのは、エディターの前田太志さん。6 人に各 1 時間ほど取材した。「ポートレートはファッション誌のシューティングが得意なカメラマンをアサインしました。Instagramなどで洗練されたビジュアルを見慣れている若者層に、建築の仕事らしいインテリジェンスを感じさせるような構図や光の当て方としています。ただし大学は信頼感が大事なので表現を誇張しすぎず、リアリティを重視しました」。
ここからディスプレイディレクターの飯高真嘉さん、アートディレクターの吉田敦さんが、ディスプレイデザインに落とし込んだ。「12 メートルのスケールの中で読んでもらうため、奥行きと幅をどう利用するか考えました。もともとフレームごとに区切られているショウケースなので、均等にパネルを配置して 6 人を紹介する構成に。さらに空間の左手にある1基を起点に、左から右へ6人のパネルに目を通してもらえる動線としています。上部に大学の年表として 1887 年から現在までの歩みを配置したのも、そのためです」(飯高さん)。
卒業生の紹介で透明のパネルを用いたのは、奥行きを出すためのギミックだ。「ショーウインドウでよく用いる演出のひとつ。透明なパネルに文字を浮かび上がらせることで視認性が上がり、クールな雰囲気にもなります。色は明るい未来や希望を感じさせるイエローと、卒業生の作品を際立たせる白を用いました」(吉田さん)。
プロデューサーの髙瀬弘将さんによると、大学側のもっと個を光らせたいという課題は、スタッフの多様な個性を大事にしてきたビームスのあり方にも通ずるところがあった。「私たちだからこそ引き出せた 6 人の個性とともに、未来への期待を醸成する展示に仕上がったと思います」。
スタッフリスト
- 企画制作
- ビームスクリエイティブ
- ディスプレイディレクター
- 飯高真嘉(VMD 部ヴィジュアル販促課)
- AD+D
- 吉田敦(クリエイティブ部デザイン課)
- エディター
- 前田太志(クリエイティブ部オウンドメディア制作課)
- 撮影
- 井戸健介(同)
- Pr
- 髙瀬弘将(宣伝販促部)
- ライター(外部スタッフ)
- 菊地亮(KANADEL)
- 撮影(同)
- 鈴木克典
ビームスクリエイティブ
「ビームス」の広告やマーケティング、コミュニケーションツール、店舗デザインなどの全てを手がけるクリエイティブ集団。1987年の設立以来、時代の変化やファッション・ライフスタイルの変遷に呼応しながら、その活動領域を異業種との協業などへと広げている。