顧客視点で事業の本質を探るBCDワークショップを提供
2013年にクリエイティブエージェンシーとして設立されたkiCk。ECDの市川辰徳氏とCIOの長沼宏介氏は「当社はマーケティング戦略の立案から、戦術策定、クリエイティブの企画・制作とその後の運用に至るまでをワンストップでトータルコーディネート。大手広告会社やコンサルティング会社、エンターテインメント業界の出身者など、様々な経験を経た、各セクションの専門知識とスキルを身につけたプロが統合案件から個別案件まで柔軟に対応。すべてを社内で一括して行えるため、迅速なプロジェクトの進行が可能です」と話す。
今年3月には事業の更なる拡充を目指し事業再編を実施し、ホールディングス会社FLAGS HOLDINGSを設立。kiCkはクリエイティブエージェンシー事業、プロダクション事業、キャスティング事業、XR事業を行うクリエイティブカンパニーとして、新設のiUMはギフティングプラットフォーム事業、ギフティングエンタメ事業、マインドヘルステック事業を展開するウェルビーイングカンパニーとして分社化した。
現在、kiCkでは「顧客の視点を手に入れ、いま何をするべきかを一緒に見つける」というコンセプトで開発されたBCD(ビジネスコンセプトダイアグラム)というツールを使ったワークショップを行っている。
BCDとはコミュニケーション戦略マップで企業の理念・戦略・施策と顧客の心理変容の関係を図解する手法。具体的にはターゲットとなる消費者が何をゴールとして、どう感情が変化していくのかを図式化し、社員にビジネス全体を考えてもらうという、社員を巻き込むプロジェクトだ。
図表1 BCD簡略イメージ図(「健康食品」の例)
「BCDはもともとはWebサイトの構築や改善のため、人がどのように情報に触れ、購入に至るのか、買った後にどう行動するのかを視覚化する手段として考案されたもの。それを私がWebサイトだけではなくビジネス全体のことを考えるためにブラッシュアップしました」と長沼氏は話す。
BCDは従来のマーケティングのフレームワークと何が違うのか?それは、企業ではなく顧客の視点に立っている点に最大の特徴がある。さらに「顧客行動を時系列でつなぎタッチポイントやペインを洗い出す」カスタマージャーニーマップと異なり、「買う」ことがゴールではない。BCDは理念や戦略に基づく企業視点で顧客の理想的な心理変容を描き、施策を抽出・整理でき、「顧客にどんな気持ちになってもらいたいか?」を考えることで企業・商品が提供する本質的な価値が洗い出せるという。
「つい目先の売上ばかり追い求めがちになりますが、本来この事業はなぜ存在するのかというゴールを見つけることが重要なはず。しかし残念ながらこの点に気づいていない人が案外多いです。ワークショップでは、社員同士が一緒にディスカッションをしながら、ゴールを達成するために自分たちは何をすればいいのかを考えています」と長沼氏。
具体的なBCDの進め方について長沼氏は、「まず企業の理念や強みを生かした顧客視点のゴールを決める。次にゴールから遡ったスタート状態を決め、そこからゴールに近づく際に変化する心理要因を2つ選んで、縦横の軸として設定。最後にゴールまでの顧客の態度変容を、心理ハードルを突破していくステップに分解して書き出します」と説明する。
「ワークショップには経営陣、さらに直接はマーケティングにかかわらない部門の従業員にも参加してもらいます。そのため、顧客視点をビジネスに関与する全員で共有するという社内全体を巻き込んだプロジェクトとも言え、マーケティングの知識がなくても経営と現場が同じ意識を持てる機会となります」という。
長期目線で顧客の発展を提案する「企業デザイン」を推進
「BCDはインターナルコミュニケーションにもつながるとクライアントに興味を持ってもらえる」と語る長沼氏。
「BCDを活用したkiCkならではの提供価値とは、打ち手にこだわらない企業姿勢。場合によっては、ロゴ制作の依頼を受けて、BCDを使ったワークショップを実施したところ、今やるべきはロゴ制作ではなかったという結論に至ることも。それは真にその企業が今やるべきことを考え抜いている証拠」と話す。
創業時からkiCkでは“共謀力”という言葉を大事にしており、単なるビジネス的なWIN-WINの関係ではなく、本当の意味でのゴールに向かうパートナーシップづくりにこだわり続けている。
「ワークショップの結果『やはりロゴはやめた』ケースにしても、短期的にはWINではありませんが、その先に我々の力が必要になるはず。その時は声をかけてくださいと伝えています。顧客の『企業デザイン』をサポートする武器として、今後もBCDを活用していきたい」と語った。
お問い合わせ
株式会社kiCk
TEL:03-6434-7217
MAIL:info@kick.co.jp
事例掲載ページ:https://kick.co.jp/works/detail_0109.html