本質的な課題を分析し継続的な活動の礎をつくる
—データマネジメント分野で長い歴史をもつセゾン情報システムズですが、ブランド戦略に課題があったと聞きます。
横井:当社は2020年に創立50周年を迎えたデータエンジニアリングカンパニー。ファイル・データ連携の「HULFT」「DataSpider」などの製品は約30年前から提供を開始しています。一方で、今年度も次世代クラウド型のデータプラットフォームの展開を予定しているなど、時代にあわせた新サービスも絶えず提供しています。
しかし「HULFT」がロングセラーブランドであるがゆえに、製品にレガシーというイメージがついている状態でした。時代にあわせた新技術を用いたサービスを次々と世に送り出しているにもかかわらず、実際にはその実態が正確に伝わっていなかったのです。その原因を考えると製品のスペックや機能的な価値ばかりに目を向け、もう一方の情緒的価値について深く考えられていなかったのではないか、ということに気づきました。この課題を解決するため、ブランド戦略構築のパートナーとして定評のあったバニスターさんに相談をしました。
細谷:ブランド戦略を支援する当社が、常に大切にしているのは「ブランドのお客さまに対して提供する価値とは何か」を明確にすること。今回課題をうかがったとき、私が感じたのは、ブランドが提供するべき価値がしっかりと定義されていないことでした。その結果、製品やサービスのブランドイメージ、ブランド認知、社内外でのブランド理解などに問題が生じていると分析しました。
—どのようなプロセスで「提供価値」を定めていったのでしょうか。
横井:プロジェクトが始まった初期の段階では、「提供価値」をひとつに定めることに多少の不安がありました。古くから親しまれて、多少堅いイメージのある「HULFT」と、さまざまなデータと繋がり柔軟なイメージの「DataSpider」との間にブランドイメージのギャップがあると考えていたからです。
細谷:しかし、その不安もプロジェクトメンバーとの議論の中で徐々に解消されていきましたよね。
横井:そうですね。議論の中でチームメンバーの考えをまとめるのに時間がかかってしまうこともありましたが、バニスターさんは、客観的に意見を聞き、議論の中で生まれた課題を整理してくれました。私たちがこれまでに考えたことのなかった「HULFT」と「DataSpider」の提供する価値の共通点に気づかされたときは感動しました。製品やサービスの増加で複雑化していた製品のポジショニングが整理され、新たな「提供価値」を創出できたのは嬉しかったです。
—「提供価値」の決定はブランディングのスタート。その後の継続的な運用が重要なのですよね。
横井:バニスターさんは表面的なノウハウだけではなく、当社の目標に耳を傾け、達成するためにどうすればいいのかというKPI設定までもサポートしてくれました。ともに歩幅をあわせてプロジェクトを進めてくれる姿勢こそ、バニスターさんを選んだ大きな理由。最初の段階で私たちの課題の根本にまで、しっかりと向き合って分析してくれたので、最終的に社内でも意識を共有できました。「提供価値」を中心にしたブランド価値を定義したことで、ひとつの旗印のもと、ブランド活動を継続していける土壌がつくれました。
細谷:当社はブランド戦略を設計する際、クライアントの皆さんとタスクを明確化します。きめ細かくタスクを可視化していくことでプロジェクトメンバーの皆さんと意思を揃え、ブランドの伝道師として社内外でブランド啓発に向けて活躍していただくことができます。「提供価値」の徹底した共有化はブランド価値を高め続けるための原動力です。
—プロジェクトの終了後も、「提供価値」の実行をクリエイティブでも継続しているとお聞きしました。
横井:「提供価値」を着実に実行していくために、体系を整理し、新たにタグラインやブランドロゴ、サブグラフィックエレメント、ブランドステートメント、ブランドガイドラインを作成しました。ブランドガイドラインでは、ルールや体系が徹底管理できたことで、常に一貫したブランド価値の訴求が可能になりました。
そして、新たに作成したコンテンツが『HULFT FUTURE STORY』。機能的価値だけではなく、パーパスも伝えることで情緒的価値も訴求することができるようになりました。もちろん、機能面で製品を選んでいただきたいですが、新たに良い機能の製品が誕生すれば乗り換えが起こるのがこの業界。長く支持され続けるブランドになるためには、ブランドの想いを発信し、情緒的にも共感していただくことが必要です。ブランドはコンセプトをつくって終わりではなく、社内に「提供価値」を浸透させ、お客さまに約束し、実践することで構築できるもの。今後も「提供価値」からブレないよう、一貫性をもって活動したいです。
細谷:ブランド活動で大切なのはすべての基盤となる「提供価値」の明確化。そのゆるぎない基盤がしっかり組み立てられた後は、様々なコミュニケーション活動にも派生できるはずです。市場成長が期待されるDXなどのデジタル領域のブランド戦略においても同じです。物凄いスピードで機能的便益が変革するカテゴリーだからこそ、中期的に揺らぐことのない「提供価値」の設定が必要です。競合との差別性や顧客との適切性をみきわめ、ブランド価値を定義した上で、具体的に実践し続けることが、強力なブランドづくりには求められます。
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