ドラッグストア最大手ウエルシア薬局が、消費者とメーカーのコミュニケーションの場として、新たなメディアづくりに取り組んでいる。これまでの取り組みについて、同社の販促企画を束ねる清田明信氏と、広告配信を担うマイクロアドデジタルサイネージの工藤裕貴氏に話を聞いた。
店舗入口で接点をつくり購買体験の向上を図る
生活者の日常における接点づくりがメーカーのブランディングにとって重要性を増している。そうした中で、ここ数年、人々の生活動線上に広告メディアを開発する動きが進められてきた。
2021年6月、ドラッグストアチェーン・ウエルシア薬局の全国約1600店舗に、マイクロアドデジタルサイネージが開発・提供するデジタルサイネージアドネットワーク『MONOLITHS(モノリス)』が導入された。店舗の入口、買い物カゴを手にする場所にソニー製のブラビア4Kディスプレイが併設されており、これから買い物をする消費者に対して入店前に広告を放映することで、購買体験の向上を図る仕組みになっている。
ポイントは買い物カゴとの併設 意思決定直前についで買いを促す
なぜ店舗入口なのか。その狙いについてウエルシア薬局販促企画部長の清田氏は「店舗の入口こそがお客さまと繋がる場所」と話す。
「小売店の店舗では、チラシやPOP、ポスターなど大量の紙媒体を使用しています。しかし、それらの管理や定期的な貼り替えにはコストも時間もかかります。デジタル施策も進めていて、顧客向けアプリもありますが、店舗での施策に比べるとどうしてもリーチ数が限られてしまう。そこで、多くのお客さまに接触できる店舗の入口で、紙を使わずにインパクトをもってメッセージを伝えられるデジタルサイネージの設置に、メリットを感じました」(清田氏)。
また広告の観点でも、「入店タイミングで商品の広告を見ていただくことは、お客さまの購買体験の向上に繋がる」と清田氏。電子チラシ「Shufoo!」の調査データ(※)でも、消費者の“ついで買い”頻度は非常に高く、「毎回」「2回に1回」合わせて68.5%。ドラッグストアはスーパーマーケットに次ぐ“ついで買い”スポットであり、このときにいかに店舗入り口でコミュニケーションを取るかが、購買行動のカギを握る。
マイクロアドデジタルサイネージと行ってきた実証実験では、モニターと買い物カゴを併設することで高い視認性を得られることを確認。同社・広告事業部長の工藤氏は「入店タイミングは購入の意思決定が行われる直前であり、そこで情報を発信することで、ブランドスイッチや“ついで買い”を促したい」と話す。
POSデータとの連動で継続的な運用が可能に
広告配信後は、ウエルシア店舗のPOSデータを基にレポートがフィードバックされ、効果測定・分析を行う。それにより、出稿メーカーの販促効果の最大化を図ることができるのも特徴だ。
さらに、マイクロアドデジタルサイネージが提供するアドネットワーク『MONOLITHS』では、広告主は日時やエリアなどの要望に合わせた条件を設定し、対象となるデジタルサイネージへの配信が可能。曜日や時間帯、シルバーデーなどの店舗イベントに合わせ、自社製品のターゲットと合致したタイミングを探る。
「より効果的な広告配信タイミングやクリエイティブについて、レポートをもとに改善を図ることが可能です。継続した運用で、成果を高めていくことができます」(工藤氏)。
また天気・気温・湿度などの気象データや、スギ花粉飛散量、熱中症指数と連動することで、小売店には欠かせないウェザーマーケティングを後押し。清田氏も「天候によって特定の商品が多く売れるなど、はっきりとした関連がみられる」と話す。
コミュニケーションの場としてのデジタルサイネージ
現在、食品や飲料、化粧品、日用品など幅広い商材の広告を放映しているが、実証実験期間を含めて約7割の商品で売上げが増加した。
「マイクロアドデジタルサイネージと密に議論を重ね、さらに良い媒体づくりを目指したい」と話す清田氏。店舗DX化の観点からも、各店舗の方針と合致した広告を放映でき、さらに店休情報や臨時の告知もその場でカスタマイズできることから、「うちにも置いてほしい」と未導入店からの要望もあるという。
消費者にとって最適なタイミングで情報が表示されるデジタルサイネージ。今後は設置店を拡大し、全国約1800店ほぼ全店での展開を目指す。両氏は、このメディアを消費者と店舗、メーカーのコミュニケーションの場として、連携を強めていきたいと話した。
株式会社マイクロアドデジタルサイネージ
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TEL:050-1741-2009(代表番号)