消費者のオンラインメディアへの接触時間が増加傾向にある中、紙に限らない「雑誌メディア」の広告効果調査が本格化しようとしている。
日本雑誌広告協会と日本雑誌協会は、出版社が運営するWebサイトまで対象を広げた、雑誌本誌とデジタルメディアを横断した広告効果の調査結果を明らかにした。美容・コスメ系では、本誌読者やWebサイト読者は広告接触によって、来店意向が非読者と比べて20〜30ポイント高くなることなどがわかった。9月7日の日本アドバタイザーズ協会との3団体共催のオンラインセミナーで先行発表した。セミナーには出版社や広告会社などから455人のエントリー(参加申込)があったという。
「新M-VALUEプレ調査」と銘打ち、講談社や光文社、小学館、集英社、文藝春秋、マガジンハウスの出版社6社と、電通、博報堂DYメディアパートナーズ、 ADKマーケティング・ソリューションズら広告会社3社の共同プロジェクトとして実施。今後、両協会は本調査に向けた手法や指標などの検証を進め、従来の「雑誌広告調査」から「雑誌+デジタル広告調査」への転換を図る。
対象とした紙の雑誌は『BRUTUS(ブルータス)』(マガジンハウス)、『美的』(小学館)、『MAQUIA(マキア)』(集英社)。Webサイトは『美的.com』『MAQUIA ONLINE』『美ST ONLINE』の本誌連動Webサイトと、Web単独の『mi-mollet(ミモレ)』(講談社)。合計で読者2124サンプルと、非読者350サンプルを比べた。
美容・コスメ系(『美的』『MAQUIA』とその連動Webサイト)での広告接触では、純広告やタイアップ記事を「見た・読んだ」と回答した人は、本誌読者では39.9%、Webサイト読者では28.5%となった。「見たような気がする」まで含めた接触率合計では、本誌が64.6%、Webサイトが58.3%だった。一方、接触後の変化では、「来店意向」が本誌読者では47.0%(非読者20.0%)、Webサイト読者では63.7%(非読者36.7%)と、高い影響が見られた。
また、『美的』の本誌読者と『美的.COM』ユーザーでタイアップ広告に対する効果を見た場合、「広告接触」は本誌読者が55%、Webサイトユーザーが50%と、本誌読者のほうが5ポイント高い結果となった。「理解」「興味・関心」「利用意向」「好意」では、Webサイトユーザーのほうが、成分名などの具体的な訴求内容に対する反応が高かった。
小学館 広告局デジタルメディア営業センターの河村英紀氏は、「紙の雑誌よりWebサイトのほうが、来店意向を押し上げているのは、すでにネット検索などを経て需要が形成されているユーザーが一定程度流入していることが要因ではないか」と指摘する。
「Webメディアは慣習的に暇つぶしなど積極性が比較的弱い状態、雑誌は強い状態ととらえられていたが、必ずしもそうではないことが調査から伺える。雑誌系Webサイトは『自分だけのお気に入りの情報源』であり、能動的な姿勢でコンテンツに接触しているのではないか』(河村氏)
調査では、アンケートのほか、ネットの閲覧履歴を記録する「Cookie(クッキー)」を使用。電通、博報堂、ADKの大手広告会社のデータ基盤を用いて、Web上での行動も探った。読者のほうが、企業やブランドのWebサイトを見る傾向が高く、本誌とWebサイトで読者が3割〜4割強、重複することもわかった。
企業が広告を出すメディアは、オンライン系に移行しつつある。新型コロナウイルス感染症の拡大で、投資先の移転など広告を手控える逆風もあり、2020年の雑誌広告費は19年比73.0%の1223億円となった(電通『2020年 日本の広告費』)。他方、雑誌由来のデジタル広告費は同比110.1%の446億円に伸長しつつある。
取次ベースの紙の雑誌販売金額は1兆2000億円近くに達した1997年をピークに22年連続で減少し、2020年は5576億円と半減以下となっている。広告収益においても、出版社が発信するコンテンツの優位性をどう証明するかが争点となっている。