中国の市場を理解する2つの視点
市場の魅力度と引き換えに政治的なリスクを容認したとしても、ビジネスそのものに対する不安が中国市場進出には常に付きまといます。私はこれを以下のように分けて整理して理解することで対処しています。
①ビジネス慣習の違い
②規模や成長段階など市場環境の違い
①ビジネス慣習の違い
これまで、日中間ビジネスの実務を通して本当に多くの違いを感じてきました。以下、それぞれ説明していきます。
・個人主義/縁故重視
・実益主義/スピード重視
・実践主義/計画より実行重視
オーナー主体のワンマン経営者が多く、そこと繋がればビジネスはとても早く動きます。一方従業員も個人主義が強く、個人のメリットになれば組織内の既存の「制約」を越えてでも動いてゆきます。ただし従業員の権限は小さいので、本当に動き出すまではうまい話も話半分で見立てる必要があります。
日本と関係性を持つようなレベルの相手のほとんどは、個人で大きな資本力を持ち、チャンスととらえれば即断即決で意思決定を行います。そのスピードが相手に対しての交渉力に繋がることをよく知っているのです。一方うまく行かなければ途中撤退も辞さない。自己責任の中で躊躇なく撤退するので、組む側も初めからリスクヘッジの想定が必要です。
そのため業務を委託する関係の場合、仕事が完結するまでは決して任せきるわけにいかず、常に何某かの担保を用意して、例えば途中放棄すると相手も損する状況をつくることなどの対策が求められます。
ここにあげたのはほんの一例ですが、日本国内での取引と比較してストレスを感じる違いは本当に多く存在します。これら、共通しているのは「お互いの自己責任」というスタンス。相手に依存せず、自分だけを信じる。言葉を選ばずに言えば「相手を信じない」ことがベースに強くあると思います。
しかし国境を越えたビジネスでは、むしろ普通のことであると考えられるようになりました。それが特に中国と対峙する場合においては、彼らは国内取引も厳しい競争環境下で上記のようなスタンスで対応しているためより強く出るのであろうと思われます。
「相手を簡単に信じない」「自己責任で相手に依存しない」ことが中国に対するビジネスを行う際に非常に重要です。一方で相手にとって有益なパートナーとなれば安定かつ継続した関係を構築できることも。つまり、シンプルにビジネスにおける自身の提供価値が高ければ、相手にとっての重要度も高まり良好な関係性を継続して発展させることができるのです。
②市場規模や成長段階など環境の違い
13億人以上の人口を有する市場に訪れた高度経済成長。これはバブル期を経験した私にも想像を超えた世界でした。経済が成長し、所得が増え、生活が豊かになり、家、車、家電、ブランド品等を購入できるようになります。
近年の中国の姿を見て、私たちはつい日本の以前の姿と被らせがちです。マーケティング戦略を考えるにあたって、日本の成長期の体験と照らし合わせることは消費者心理の想定においては役に立つ部分もあります。
しかし決定的に違うのは、その規模です。日本の10倍以上の市場の高度成長の迫力は、私たちは経験したことがなく、なかなか想像がつきません。成長段階の側面だけを見て「昔の日本みたい」と理解しやや安易に市場を捉える傾向が中国市場進出を検討する企業に多く見受けられました。市場規模、IT化影響、国家資本主義的な環境の違いの側面などの要因をしっかりと確認せずに楽観的な見立てで市場を捉えることによって、せっかく良い商品やサービスを持ちながら、進出がうまく行かないケースも多くみられます。企業側にそもそも新規市場進出経験がない、正しく理解するための情報が少ない、などの課題も存在します。
この中国13億人市場に対して、直接的に短期間で事業展開できる可能性があるのがEC事業です。市場規模の大きさは、投資規模 / 収益化計画 / プロモーション戦略に大きな影響を及ぼし、日本の成功体験が通じづらく対策が必要となります。またインターネット環境の理解なしにEC事業の成功はあり得ません。EC事業のマーケティング戦略においてプロモーションに影響を及ぼす中国のインターネット状況ついて触れていきます。