中国の特殊なインターネット事情とは?
多くの方がご存知かもしれませんが、中国にはチャイニーズグレートファイヤーウォールといわれるインターネットの情報隔壁を政治的統治の理由で設けています。そのため世界的な検索エンジンやSNS、ECプラットフォームのほとんどは中国国内では閲覧できずに現地の独自のサービスに置き換えられているのです。
LINE≒Wechat
Twitter≒Weibo
Google≒Baidu
Instagram≒Red Book
イメージが湧きやすいように≒で表現しましたが、各サービスはまったく同じというわけではなく、むしろ機能的で利用しやすいサービスとして発展している場合も多々あります。
そして、ネット上の各領域(EC、SNS、動画投稿、旅行サイト、評価サイトなど)における上位想起サービスはほぼすべてBaidu、Alibaba、Tencent(以下BAT)のいずれかの企業資本集団の配下にあります。言い換えるとBATという3つの資本グループが消費者のインターネットサービスの利用シェアを取り合う熾烈な競争をしているということです。
BATの特徴は簡単にいうと、Baidu=検索エンジン、Alibaba=EC、Tencent=SNSが元来の強みとなります。各企業集団が得意な領域を伸ばし、苦手な領域を自社開発もしくは資本注入などで補いながら、競合関係を形成しています。
日本の状況をベースに考えると検索エンジンを持つBaiduが、ネット上のサービスを横串でおさえ、ネット広告においてGoogle のように優位に立ちそうですが、中国ではやや事情が異なります。
1. 中国ではインターネット通信環境が整備された時期と、スマートフォンの普及時期に日本ほど時差がなく、多くの消費者はスマートフォンでインターネットを利用しています。消費者の情報取得はWebよりもアプリへの依存度が高くその分検索エンジンの影響度が減少します。
2. サービス提供者側もアプリをダウンロードして利用してもらえれば、競合サービスへの乗り換えリスクが、Webの場合1クリックで競合サービスに流出することと比較して減少するため、よりアプリ利用に繋がるような対策を取ります。
3. アプリ以外のWeb上であってもBATの競合対策が激しく、例えばAlibabaのECモール出店者がBaiduのリスティング広告を活用しても店舗への直接流入はつくれず、いったんECモールのTOPページに着地し、そのECモールの検索窓から再検索が必要となります。
4. 他にもRED BOOKでの投稿記事には他のECモールへのリンクが貼れない、など個別アプリごとで他のサービスへのリンクについての細かな「制約」が多く存在します。これらはまとめて開示されたルールブック的なものはなく、実際に利用する中でわかる「制約」です。そしてその「制約」は予告なく頻繁に変更されます。
これら検索エンジンの効力の違いやネット集客における「制約」を十分に理解したうえでEC戦略を考える必要があります。
そのようにネット集客が簡単ではない状況下では、大手EC Mallが圧倒的に強く、他にもいくつかの要因があって、自社サイトへの集客は基本的には難しいと考えた方がよいでしょう。ただし、その現状に対抗してTencent社が自社サイト構築を支援するWechatミニプログラムというサービスを展開していて市場ニーズに応える動きを見せています。詳細については次回の「中編」で深堀していきます。