EC化が加速する中国
ネットで買っても「物が来るかどうかわからない」「粗悪品や偽物が来たらどうしよう」
そのような商取引の信用不安が当たり前であった中国で、ECでの購入は消費者にとって非常にリスクの高い行為でした。
そのような状況下でEC取引に革命を起こしたのが、既にご存知の方も多いと思いますがAlibabaグループが開発したAlipayです。現在ではヤフオク等個人間取引ではあたりまえに導入されている概念なので目新しいことではありませんが、当時の中国では画期的な制度でした。
概要は以下の通りです。
1. 消費者が商品を購入する
2. モールが消費者のAlipayから代金を預かる
3. モールが代金を預かったことをショップに通知
4. ショップはそれを受けて消費者に商品を発送
5. 消費者は無事に商品が届き問題がなかったことをモールに報告
6. モールはそれを受けて代金をショップに送金する
この信用保証制度によって、AlibabaのECとAlipayは急速に発展しました。また中国でEC利用時以外の日常生活でも電子マネーが発展した背景には以下のような要因があります。
・政府がお金の流れを掌握するため国策として支援したこと
・偽札などが日常的に出回り消費者側に通貨不安があったこと
・そもそもクレジットカードが発達せず、銀聯というデビットカード機能を普及させたこと
特に3点目について、中国ではクレジットカードは信用保証しても回収率に問題がありカード会社が積極的に展開できず普及が遅れていました。それに代わって個人の銀行残高の範囲で信用保証し即時決済できるデビット機能が先に普及しました。そのデビット機能が「銀聯」です。
「銀聯」は 銀行口座を開設すると銀行カードに同時にセットされます。これによって銀行口座のある人はほぼすべてデビット機能「銀聯」を持つことになりました。
この「銀聯」で決済できるように市中のほとんどの店頭に銀聯カード決済端末がおかれ2010年頃にはすでに銀聯カードを利用したキャッシュレス決済が市中で日常的に行われるようになっていました。それによって最もパワーのかかる実決済の場のカード決済インフラが「銀聯」一本化で行き渡っていたため、容易にかつスピーディーにAlipay、WechatPayなどの電子マネーが浸透しました。
中国におけるEC発展の別の側面として、流通業の経営が非常に難しい点もあげられます。理由は都市部の地価がとんでもなく高額なため流通業は利益創出が難しいという理由です。
上海の古北地区、日本領事館のある虹橋に隣接するエリアで日本人も多く暮らしている地域ですが、そこに2014年当時フランス資本のカルフールがありました。当時、世界中のカルフールで売上高が最上位級にあたる大規模店舗です。店舗は圧倒的な集客力を持ち、休日には駐車場に入るために車の列が恒常的にできています。
またビジネス構造としても圧倒的な集客力を背景に、商品の売上利益だけでなく、販売協力費、棚取り費など様々な収入源をつくっていました。それでも当時の年度決算は赤字。数年後には撤退となりました。
経営面での問題や外資ということでの「制約」も撤退の背景にはあると思われますが、やはり賃借料負担が大きすぎることの影響も大きかったと思われます。ちょうど同じころウォルマートも撤退しています。
また当時私の会社がサポートさせていただいていたクライアントである日系菓子メーカーはカルフールについて「とにかく棚取り費用や販売協力金が高い。そして当該クライアントは台湾や中国国内メーカーと比べて商品原価が高いのでどうやっても利益化が難しい」とこぼしておられました。自社販売員を派遣し、直接商品を推奨し体験して知ってもらう場としてのCostと割り切りながら早い段階からD2C、メーカー直販ECに舵を切られていました。
・消費者視点に立ったECサービスの草創
・銀聯インフラをベースにした電子マネーの発展
・地価高騰による都市部での流通業経営の難しさ
このような背景から中国のEC市場は大きな発展を遂げていると捉えています。