オンライン化が進んでもコールニーズは減らない
NTT西日本グループでは2008年、同社の窓口に寄せられた意見・要望をサービス改善に反映させる「ウィズカスタマー活動」を開始した。そのノウハウを活かし、40拠点7500席のコンタクトセンター運営・BPO・CXを担うのが、NTTマーケティングアクト。様々な業種業態のクライアントへさらなる顧客満足の向上を支援している。2017年にはVOC分析・コンサルティングを専門とする「VOCサポートセンタ」を開設した。
同センターでは、専門コンサルタントとのディスカッションを通して現状の課題をクリアにし、仕様設計、VOCデータの整備をサポート。アナリストによる分析とレポートを受け、次の改善へとつなげていく仕組みづくりを行う。
いま、自社サイトのチャットボットやSNSサービスを活用したオンラインの窓口などが、多くの企業で用意されるようになっている。しかしそれでも、コールセンターへの問い合わせニーズは減少していないと話すのは、カスタマーソリューション事業推進部シニアプロデューサーの米林敏幸氏だ。
「顧客接点のオンライン化が加速することで、コールがチャットやWebに置き換わると想定していましたが、実態はそうではありません。これまでは、コールしていたのはお困りユーザーの一部のみ。オンライン化による選択肢の拡大で、問い合わせ総数が増えた。実際には“サイレントカスタマー”として多くの人々が課題を抱えていて、場合によっては未解決のままでした」(米林氏)。
コールセンターに問い合わせをするユーザーのうち7割は、まずWebサイトを訪れて自己解決を図ったが、疑問があって電話をかけてきた人たち。そこには、オンラインだけでは見えてこない“本当に困っている”顧客のリアルな声がある【図表1】。
「電話ではその声色がダイレクトに伝わるため、感情や相手の個性も把握することができます。また対話を重ねることで、真のニーズの掘り起こしや、マイナス感情の裏にあるプラスの提案や意見も捉えることができるんです」と米林氏は話す。
コンタクトリーズンを分類しSTPや4P分析に活用する
マーケティングにおいて必須である、顧客分析。購買データやWebサイトへのアクセスなど、デジタル基点の情報は比較的扱いやすく、多くの企業が取り入れている。一方で、顧客の想いを知ることができる「Call-VOC」は、前述の通り貴重な情報源。しかし音声データという特性上、専門ノウハウをもつ分析が求められる。
それでは、実際に課題設定から分析・改善につなげた事例とはどのようなものか。
ある製薬会社で提示された課題は、「既存商品と差異化を図った新商品が顧客に受け入れられるか確かめたい。顧客の生の声を基に潜在ニーズを発見し、商品・サービス開発につなげたい」というもの。そこでお客さま相談室に寄せられた新商品に関するコンタクトリーズンを分析すると、新商品は既存の商品と比較し高価であることから「サンプル品が欲しい」といった声や、シワ・シミといったアンチエイジングへの期待度が既存商品よりも一層高いことを新たに把握できた。さらに、想定しなかった男性層からは、シワの改善対策への期待や、購入きっかけも把握でき、新たなニーズやターゲット層の発掘ができたという。
また別のメーカーでは、新商品の広告掲載に対する反響分析を実施し、4P分析への活用を行った。購入先に関する問い合わせといった想定していた声のほか、家族での利用によるセット購入の需要などの新たな商品ニーズを発掘できたそうだ。
実際に各企業のコンサルティングを担ってきた同部CXチーフアナリストの門寺遥香氏は、「これらの分析を、例えば次回の広告に反映させたり、販売チャネルとの連携強化に活用することが可能。また、潜在ニーズを基にした、新商品の開発に活かしていただくことも可能です」と話す。
収益を上げるための答えは顧客の声の中にある
DXにおいては、“とりあえず効率化のためにシステムを導入する”という事例は多い。しかし最も重要なのは、顧客体験の向上をビジネスの成長に結び付けていくことだと、同部チーフプロデューサーの井上雅博氏は述べる。
顧客接点の最適化を支援する『CXコンサルティング』への問い合わせも増加。カスタマーサービスを収益拡大につなげるマネジメントモデル「CX3.0®」に基づいて、VOCから「痛点」を明確化。顧客が離反する割合や収益への影響度を調査により定量化し、施策の強化を図ることも可能になる。
「収益を上げるための解決策は、顧客の声の中にこそあると思っています。だからこそ徹底的に、その思考や感情を分析する必要がある」と井上氏。コールセンターだけではない、店舗やSNS上、また対面営業など、あらゆる接点で得られるVOCを統合分析し、顧客の痛点を改善施策に活かすワークショップも実施。そこには、部門を横断して参加してもらうのだという。
「重要なのは、コールセンターだけ、マーケターだけ、ではなく、全社で顧客の声と向き合って理解すること。統一した意志のもとで、DXを活用したロードマップを描くことが必要だと考えています」(井上氏)。
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