ボブ・ホフマンが嘆く消費支出が高いのに無視されるシニア世代
元エージェンシーの経営者でもある米国のボブ・ホフマンは辛口の業界批判で有名ですが、著書である『疑い深い人のための広告(Advertising for Skeptics, 2020年刊)』において、米国のマーケターたちがミレニアル世代やZ世代を必要以上に重視している姿勢に疑問を投げかけています。
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米国におけるミレニアル世代の定義は1980年から2000年に生まれた世代で、2021年時点では21-41歳、Z世代はその下で20歳以下、ということになります。しかしながら、ボブ・ホフマンは米国全体の経済は50歳以上のシニア世代に支えられているという事実を指摘します。
- 米国では50歳以上の人口が全米の消費金額の半分を占めている。
- 50歳以上の人口は多くのカテゴリーでの平均の消費金額を上回っている:食品、家庭用品、娯楽、パーソナルケア、自動車など。
- 上記の50歳以上の人口の占める消費金額は、すべての消費者向け製品の売り上げの55%に相当し、消費者向け製品カテゴリーの94%を占める。
- 50歳以上の人口は、一人あたりのオンラインでの支出は、他の成人よりも2:1で上回る。
- 50歳以上の人口は、他の世代より3倍多くの資産を保有している。
- 50歳以上の人口は全米の70%の富を管理している。
- 50歳以上の米国の人口が、独立した国と考えると、日本とドイツを抜いて、世界で3番目に経済が大きい国となる。
- 2030年までに50歳以上の人口が、50歳以下の年齢層よりも3倍の比率で増加する。
ボブ・ホフマンは、広告業界が1960年代から、とにかく若い世代を特別視して、「新しい世代」を消費のトレンドに仕立て上げてきたこと。そしれ音楽や娯楽といったセレブリティが次から次へと現れることが商売のタネになっていることを認めつつも、この事実に対して冷ややに批判をしています。ボブ・ホフマンが指摘しているように、実際に米国の広告主企業もシニア世代には積極的に広告投資していないようです。前述の著書には、「調査会社ニールセンによると、2016年の50歳以上向けのマーケティング活動は業界全体の5-10%に過ぎない」という指摘もあるからです。