メディアや広告が実質的な消費ではなく、若年層を向いているのは何故か
ボブ・ホフマンが年齢別の消費支出の差にこだわる理由は、文化や娯楽のトレンド自体を若者がリードしていたとしても、彼らは実際に使えるお金を持っているかどうかが問題だと考えるからです。たしかに広告全盛期の60年代から80年代は、消費支出をリードしていた年代とトレンドが一致していたのかもしれません。
しかし、今は仮にネットで流行っていようが実際のお金の使いどころが違うかもしれない、という疑問があるからでしょう。特に21世紀のデジタル中心の世の中では、インターネットによるメディアは新聞や雑誌と違い、基本的に無料のものが多く、いくらその接触時間が長くても消費に結びつかなければ投資対象としてはリターンが小さくなるという懸念があることも否めません。これはメディア接触が多い世代と購買力がある世代が一致していないという点だけでなく、デジタルメディアによって、マスメディアの時代と比べて世の中のトレンドが分散化しているため、ネットの流行は実際の市場には直接影響がないかもしれないという疑問です。
これはひろゆき氏が以前「YouTubeはたしかに再生回数は多いが、見ているのはお金を持っていない子供ばかり」と言っていたのを思い出します。かつてはテレビでも昭和40年代から50年代は子供番組があふれており、互いにテレビ局は世帯視聴率を競っていました。この前提はテレビが世帯視聴の中心メディアであり、家族が揃ってテレビを見ていたという事情もあったからかもしれません。これと対比して今では子供はテレビを見ずに、個人でYouTubeを視聴するようになっているという違いがあるでしょう。
また、80年代にフジテレビがトレンディドラマでF1層(女性の25-34歳)の視聴率を高くすることでそのターゲットを狙った企業をスポンサーとして惹きつけたことがありました。これは今よりもこの層の女性が消費のトレンドをリードしており、この層に好かれることで男性も含めた他のセグメントを惹きつけることができたからでもあります。それはテレビがやはり多くの年代の視聴者を有するメディアであったことも欠かせません。
メディアコンサルタントの境始氏によると、すでに現在、テレビにおいては世帯視聴率から個人視聴率へとシフトしており、特に日本テレビやTBSは、広告主が広告費を投下する傾向にある年齢層の個人視聴率を指標として用いて実績をあげています。これらは「コア視聴率」や「ファミリーコア視聴率」といわれていますが、対象はシニア層を外した49歳以下になっています。やはり、シニア層は広告する価値がない世代になっているのでしょうか。