ジニ係数から考える年齢別マーケティング
日本の「再分配所得ジニ係数」を年代別に見てみると、平均値に近いのは55-59歳になり、またこの年代を境にして高年齢層になるにつれ上がり、逆に30代前半までにはゆるやかに下がり29歳以下になるとまた平均値まで上がっています。
ジニ係数が所得のバラツキを示すということであれば、この数字を見る限り、日本の中で消費支出を50歳以上が半分を占めるとしても、ジニ係数が最も高い75歳以上、60-64歳のセグメントでは、ターゲティング精度を上げる必要があるということです。また、メディア接触においても伝統的なマスメディアであるテレビや新聞がいまだにこの年代の接触時間の半分を占めていますが、この年代においてはマスのリーチの効率だけでは不十分ということになります。
逆に、ジニ係数が低くなる30歳から54歳までは、可処分所得における均質性は高まるので、マスマーケティング的なアプローチがまだ有効ということになります。この年代でも確かにデジタルは接触時間の6割を占めますが、テレビも健在です。特に女性においては30代から50代までメディア接触時間の4割を占めているため、実質的な支出を刺激するのであればまだまだ活用可能性が高いと言えます。
一方で、29歳以下になるとまたジニ係数が上がっているので、その世代にはメディア接触時間の7割を超えるデジタルによるセグメンテーションとマーケティングが有効と言えるでしょう。
さきほどオンライン支出の割合が全体の消費支出に比べて低い60代以上の年代に可能性があると書きましたが、この世代にはリーチ単価が低いメディアであるテレビでアプローチして、可処分所得の比較的高いセグメントを狙ってデジタルチャネルで購買までリードするなどの方向性が考えられます。すでに60代でも男性ではデジタルのメディア接触時間は4割に達しています。この点は30-40代におけるテレビとデジタルの関係が逆転している状態です。
逆にジニ係数が低く、オンライン支出も高い40代においては、テレビとオンラインを組み合わせたマーケティング効率と効果を最大化させることも可能です。同時にジニ係数が再び高くなる29歳以下はデジタルですべて完結するようにあらかじめセグメントされたマーケティングを狙ったほうが効率的です。
メディア費用や広告費全体としては確かに若年層のデジタルのメディア接触時間に準じて変化しています。日本に限らず、シニア層とのメディア接触の差は今後も広がる可能性もあります。しかしながら、ボブ・ホフマンが主張するように「新しい世代」だけでなく、経済の主体を握る層を広い視野で考える必要があるかもしれません。そして、ミレニアル世代はインターネットで、という単純な発想よりも、年代ごとのメディア接触時間が増えている点を細かく見ることで、可処分所得の差によってバラツキが大きくなりそうな年齢層においては、シニア層であってもデジタルメディアをうまく組み合わせることが必要になりそうです。