Braze株式会社
代表取締役社長
菊地真之氏
株式会社ニューズピックス
マーケティング・ジェネラルマネージャー
菊地幸司氏
顧客コミュニケーションに“銀の弾丸”はない
――「Braze」導入の背景について教えてください。
菊地(幸):私たちマーケティング部門のミッションは2つ。まず無料の新規会員を増やし、そこから有料会員になってもらうことと、有料会員の満足度を高めて継続利用してもらうことです。そのプロセスにおけるコミュニケーションのシナリオに、「これさえやれば正解」という“銀の弾丸”のようなものはありません。大切なのは、とにかく多くの仮説を立てて実行して検証すること。ここで施策の企画実施に手間がかかると、チャレンジのハードルが高くなってしまう。加えて契約のその先、継続利用まで含めた一貫した施策の実施となると、さらに難しくなります。
菊地(真):部門ごと、あるいは対象顧客のファネルごとにプロセスが分断していると、ひとりの顧客に対して重複したエンゲージメントや一貫性のないメッセージが届き、満足度が低下する要因になってしまいかねません。ニューズピックスさんは、その調整に工数がかかることを課題と認識していました。そこで、「Braze」であればデータ取得、リアルタイム解析によるパーソナライゼーションを一気通貫で行うことができて、数百万人いるユーザーの一人ひとりに適したメッセージを届けられますというご提案をしました。
菊地(幸):パーソナライゼーションの取り組みはこれまでも行ってきたのですが、データ処理や開発をエンジニアに依頼する必要がありました。「Braze」であれば、それを私たちマーケターの手で実行が可能。エンジニアも、より高度な開発に注力できるようになりました。また担当者毎に細かく配信権限を設定できるので、配信事故を防止するための手間や心理的負担を減らすこともできています。さらに権限移譲の設定も簡単で、各部門が自由に施策を実行できる点も魅力です。
もちろん仮説を精査して、狙いを定めた施策を実施することも重要ですが、PDCAを高速で回す方が今の時代には合っている。そのためには、簡単に実行できるツールが重要なのではないかと思います。
マーケターにとって、次の挑戦ができる環境をつくる
――メディアが考えるべき顧客中心のコミュニケーションについて、どのようにお考えですか。
菊地(幸):月並みですが、欲しいタイミングで欲しい情報が届くことが重要。これまでは「とりあえず全員に送って何人かにあたればいいや」という発想になりがちで、それは短期的に成果が出ても、最終的にユーザーとの良好な関係は築けません。
菊地(真):お客さんの状況を理解して、ポイントを捉えてメッセージを配信すれば、10件も20件も繰り返し送る必要はないんですよね。
菊地(幸):私自身もですが、「嫌だな」と思ったら配信停止ではなく迷惑メールに振り分けてしまうので、企業側は切られたことに気づかない。
菊地(真):減点されないコミュニケーションは大切ですよね。
菊地(幸):ただ、私たちもそこはまだ改善途中。具体的には、コンテンツレコメンドの機能を充実させたいと思っています。ECサイトのアイテムとは違って、メディアには日々、記事という大量のコンテンツが蓄積されていく。だからこそ、資料性が高いものは時間が経っても読んでもらえる可能性がある。膨大なコンテンツの中でも、いかにユーザーの関心にあったレコメンドができるか、そこにメディアだからこその難しさがあるように感じています。
菊地(真):なるほど。Braze自体はそうした機能は持たないのですが、いまちょうど、レコメンドエンジンとの連動について社内で話していたところなんです。業界ごとの課題に合わせたツール連携は今後、提案していきたいですね。
――カスタマーエンゲージメントを高めるにあたって、マーケターの課題はなんでしょう。
菊地(真):日本企業では特に、技術的な制約があると、今ある環境のなかでできうることを人力で頑張ってしまう傾向があると感じます。それが解決すれば、今までやれなかったことに挑戦できて、次のステージに進める。私たちはマーケティングとテクノロジーの媒介役になることで、新たなアイディアを引き出す力になれたらと思っています。
菊地(幸):マーケターの役割は今、すごく広がっていますよね。ユーザー獲得だけではなくて、長く使い続けてもらうことまでを考えなくてはならない。逆に言うと、アイディアを色々な視点で出せるようになって、仕事としてはすごく面白いのですが。
菊地(真):全体を見る視座が必要ですよね。マーケティングとテクノロジーと経営、3つの視点を意識することが、顧客エンゲージメントの向上につながる。もっと面白いことができる環境をつくるためにも、今後は人材育成にも貢献していきたいと思っています。
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