“点”から“面”へ オウンドメディアの評価と役割

【前回コラム】「同心円状のコミュニティ的メディア」はこちら

前回の記事「同心円状のコミュニティ的メディア」では、オウンドメディア上のコンテンツの、関わる人との共鳴から生まれる「同心円状の広がり」の可能性について事例とともにお届けしました。

では、オウンドメディアの評価はPVやリーチなど目に見える数値だけを追いかけることでしょうか? オウンドメディアの評価をどう捉えていけばいいのか。そしてオウンドメデイアの役割は「拡張」しうるのか。今回はこの2点について実際の事例とともに考えていきます。

オウンドメディアを「タテ」と「ヨコ」で評価する

オウンドメディアの役割のひとつは、広告等では伝えきれない「商品の価値」「企業の姿勢・ビジョン」を発信することで共感者を獲得するとことだと思います。

そのためには、そのメッセージの接触者数、すなわち数値化できる「量」を追いかける必要があります。とはいえ、このコラムで再三お伝えしている通り、オウンドメディアをつづけるためには、「社内から求められている」すなわち期待されている状態であることが必要で、その期待に応えようとすると、どうしても数値を取れないものも出てきます。内容が専門的にすぎたり、読者が絞られていたり。そうは言っても数字は追わなくてはいけない。オウンドメディア担当者が抱える大きな課題です。

翻って、私たちのnoteで発信してきた記事を振り返ると、PVやリーチなどの数値以外の価値が見出されてきました。

たとえば、とある商品の誕生の背景や味わいのこだわりが綴られた記事は、お客さまを説得するための「営業ツール」として利用されたものがありました。また、まだあまり露出していない社会貢献活動を追いかけた記事は、それをそのまま「報道向けのレター」として活用しました。従業員の「働く」にフォーカスした記事は、中途採用募集用のコンテンツとして活用されました。

コンテンツとしてはひとつであっても、活用方法が他にも展開できる、つまりコンテンツが「ヨコ」展開しうる、という評価軸が出てきます。

もうひとつ、インターネットメディアの「ストック性」に目を向けることもできます。どうしてもWebコンテンツは賞味期限を短く設定されがちです。瞬間的なバズを狙うコンテンツはそれだけ賞味期限が短くなりえます(もちろんそうでないものもあります)。

ただ、本来的なWebコンテンツの有用性は、リンクさえあればいつ何時でも掘り起こすことができるということです。

今出している記事が5年後、10年後にも同様の価値(もしくはそれ以上の価値)として、存在しうることができるか、という評価軸を加えることもできそうです。その記事が数年(数十年)経っても、新入社員や転職者向けに会社のビジョンを伝えうるコンテンツになっているか、何年経っても業務を進める上で「参考となりうる情報」となっているか?など、コンテンツに評価に時間軸を与えること、つまり「タテ」の価値も加えることができます。

一定期間のPVやリーチを参考にした「瞬間的な共感者の獲得」に追加して、「タテとヨコの面積」を追加してコンテンツを総合的に評価することが、メディアをヘルシーに継続しうるひとつの観点になりそうです。

次ページ 「プロセスのオープン化と共感の可視化」へ続く

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平山高敏(キリンホールディングス/コーポレートコミュニケーション部)
平山高敏(キリンホールディングス/コーポレートコミュニケーション部)

広告会社を経て、2012年より昭文社にて『ことりっぷweb』のプロデューサーとしてコンテンツ企画、SNS戦略、コミュニティ戦略など全般を担う。
2018年キリンホールディングス入社後は、オウンドメディアのコンテンツ戦略・LINE担当を経て「キリンビール公式note(現KIRIN公式note)」を立ち上げ、noteを軸にした企業コミュニケーションの戦略を担う。

平山高敏(キリンホールディングス/コーポレートコミュニケーション部)

広告会社を経て、2012年より昭文社にて『ことりっぷweb』のプロデューサーとしてコンテンツ企画、SNS戦略、コミュニティ戦略など全般を担う。
2018年キリンホールディングス入社後は、オウンドメディアのコンテンツ戦略・LINE担当を経て「キリンビール公式note(現KIRIN公式note)」を立ち上げ、noteを軸にした企業コミュニケーションの戦略を担う。

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