プロセスのオープン化と共感の可視化
2019年から「KIRIN BEER SALON」という取り組みを始めています。これは全5回の講座とオンラインコミュニティがセットになったもの。2021年に第三期を迎え、サロンメンバーは100名を超えるまで成長しました。
講座では、ビールの楽しみ方・飲み方の基礎的な知識をお伝えするだけではなく、人気のクラフトブルワリーなどをお迎えし、最新のビールカルチャーについて教えてもらうことができます。
講座が開かれると、サロンメンバーが「#キリンビールサロン」をつけてTwitterで感想をつぶやいてくれ、これまでのTwitterのハッシュタグ投稿によるリーチは1,500万を超えています(2021年9月現在)。
オンラインコミュニティでは、サロンメンバーだけが集まることができるFacebookグループを用意していますが、毎日のように「今日飲んだビール」「おすすめのクラフトブルワリー」などが投稿され、ビールの楽しさを共有し合うカルチャーができあがっています。
こんな熱量の高いサロンですが、取り組みの開始当時からnoteを活用していました。活用方法としては主に2つです。サロンの魅力を伝える募集記事をnoteで出すことと、講師によるサロンメンバーに向けた「手紙」をnoteで出すことでした。
募集記事では、このサロンのビジョン・想いに共感いただいたビールカルチャーに精通している方との対話を通じて、サロンの魅力、ビールの楽しさ、奥深さをお伝えすることにしました。ビールに精通した第三者との対話にすることで、読み物としての面白さを担保することはもちろん、共感をしっかりと打ち出すことで、このサロンが「1企業に閉じたコミュニティ」ではなく、「フラット」で「多様」なカルチャーが内包されていることを、説得力をもって伝えることに寄与しました。
また講師のビール愛やサロンに対する想いを素直な言葉で語ることで、ソーシャルイシュー・カルチャーに関心度の高いnoteユーザーからの興味を獲得することができ、結果として多数のご応募をいただくことになりました。共感性の高い人たちを集めることができたらからこそ、自発的なTwitterの発話につながったものと思われます。
そしてもうひとつの、サロン講師によるサロンメンバーへの「手紙」。感謝の気持ちを綴ったその「手紙」は、受け取ったサロンメンバーから講師への「返事」の言葉とともにTwitterで広がっていきました。そのウォーミーなやりとりは、サロンメンバー以外の人から見ると、空気感がダイレクトに伝わり、サロンを「追体験」することにつながりました。
結果として、これらの取り組みによるSNS上での広がりはそのまま新しい参加希望者を連れてきてくれることになりました。「KIRIN BEER SALON」は今年で第三期になりますが、毎回定員を上回るご応募をいただいております。
この事例から見えるオウンドメディアの可能性は、「共感の可視化」と「プロセスのオープン化」です。オウンドメディアで記事にする時は、その多くは、既に「完成したもの」「完了したもの」を振り返ることが多いと思います。それはそれとして「完成された」読み物としてのアーカイブ性は高いのですが、企業からの「報告」に近い記事はどこか距離が遠く感じるものです。
今まさに思っていることやゴールに向けたプロセスを、「共感者との対話」や「当人の語り口」で届けることは、その事柄への関心の高い人から共感性が高く、SNSでシェアされやすい傾向にあります。ご紹介した「KIRIN BEER SALON」に限らず、noteで多くの方の共感を得てシェアされている記事も同じ傾向にあると思います。
オウンドメディア上のコンテンツの評価を「点」ではなく、タテとヨコの面で捉えることと、「プロセス」をオープンにして共感を可視化することで、オウンドメディアは単なる情報発信を超えた役割を担える可能性が出てくると思います。