LINE、LINEのプラットフォーム内での連携で、市場調査サービス「LINEリサーチ」と、広告事業「LINE広告」を結ぶ新機能の提供を開始
データに付与される趣味・関心項目は、「ゲーム」「デジタル機器・家電」「スポーツ」など18項目で、「LINE広告」での現提供配信項目となっている。
これらの項目がLINEリサーチの調査データに付与される。
調査データと掛け合わせた分析をすることで、ターゲットにしたい層が多く分布する趣味・関心項目を特定でき、狙いたいターゲットへの効果的なアプローチをプランニングできる。
そのアプローチしたいカテゴリに対して、LINE広告の管理画面から設定・配信するという一連の流れが可能になった。また、LINEのプラットフォーム内での情報連携を活かした機能のため、広告IDの再認証やCookie規制の影響は一切受けることがなく、突合データの目減りもない。媒体社ならではの環境を生かした広告配信が実現するようになった。
これにより、市場調査で“ターゲットを研究する”に終わらず、明らかにしたターゲットがLINE上のどこに分布しているかが事実としてわかるので、そのまま広告配信にいかせることになる。クリエイティブの評価も同時に取っておけば、どのデザインで勝負すべきか、自ずと決まってくる。
以前だと調査で人物像を精緻に描き出しても、広告を出稿する際には「女性20歳〜34歳」のように性別や大まかな年齢に丸められてしまったり、「アートが好き」のようにやや抽象的な特徴付けがされて、似たような「芸術」という趣味カテゴリーをなんとなく選んでみたりといった方法が一般的であった。
しかし今回のこの機能は、事実としての分布であり、配信カテゴリの名称という符号の一致とは意味が違う。データはあくまでも匿名でLINE内で完結するため、マーケターは複雑な許諾などのハードルもなく、結果だけを手にしてアクションが取れる。このような大胆な方策が図れるのもLINEのプラットフォーム内の立地が生かされた結果である。
今後は、広告配信用の任意のシード(種)データの作成など、いわゆる「ルックアライク(類似拡張)」配信も視野に入れる。「LINEリサーチ」の事業責任者である地福節子氏は、「たとえば、新商品のコンセプトを見せて好意的な反応を寄せた人をシードにして、似たセグメントを拡張し、(シードを除いた)その対象にリリースと同時に広告を仕掛けることもできますね」と話す。
LINEリサーチは2016年に法人向けにサービスを開始。もともとはLINEのファミリーサービスの開発や改善に生かすための社内的なモニター組織だった。そのため、「テレビで言うなら視聴者、新聞や雑誌で言うなら読者。単なる調査モニターというより、『LINE』のユーザーそのものであり、極めて大切な存在として考えている」と地福氏。
LINEリサーチの“モニター”として参加しているユーザー数は、2021年8月時点で約552万人。若年層が多く、いわゆる「デジタルネイティブ」(1980年代〜90年代生まれのミレニアル世代やその次の世代であるZ世代)に強い。他の調査パネルに参加していない人の割合は65%超(2020年7月時点)。
一般的な市場調査では、毎日、市場調査に回答しているようなパネルも少なくなく、中には毎日10本単位でこなしている人もいるという。それについてきてくれる方は本当に世間一般の声を代表しているのか――市場調査にまとわりつく課題だ。地福氏自身もリサーチャーとして分析の中でそれをひしひしと感じていたという。
「しかし『LINE』ユーザーの方を対象に調査を実施してみたところ、いい意味で調査慣れしていない、リアルな声をいただけました。『これは、うち以外の企業にとっても非常に価値が高い』と考えたことが、サービス提供のきっかけです」(地福氏)
そんな「LINEリサーチ」に協力するLINEユーザーが、調査に負担を感じすぎないようにする配慮も地福氏の仕事だ。
「たとえば50問、100問といったサイズの調査票は作りません。やっぱりお答えいただく上で負担になってしまいますし、何回も続けていけば、苦しくなってもう答えたくなくなる。冗長だったり、前触れなく心に踏み込むような内容の調査もそうです。不信感が出てくる。そうすると調査としては本末転倒だからです」(地福氏)
「LINE広告」との連携を強化する、本当の狙いは、調査そのものを守り続けることにある。
「回答環境を保った適切な内容の調査を行っていくには、リサーチの価値自体を上げる必要があります。そこで調査をマーケ施策にダイレクトに生かせる仕組みを作った、というのが今回の連携強化の背景です。単に『調査した』ことだけにとどまらず、そこからのアクションまでを繋げて見える化したい。そうすると『調査の価値』は一段上がります。かつ広告の精度も上がれば、良い体験ができる広告がLINE上で展開できる。今回の仕組みは、もちろん回答した個人を特定することも、回答したその人に広告が集まることもありません。今後拡張配信をする場合もそこは変えません。元来調査と広告は混同禁止の分野でしたが、今では技術の進化で、混同しないまま並行したままの連携ができるようになりました。その結果ユーザーも企業側も、もちろんLINEも、みな良い効果を得られるようになりました。調査も役割を変えていける時代が来たと確信しています」(地福氏)
LINE株式会社
インサイトリサーチ室 室長
地福 節子
調査会社、ヤフ―株式会社を経て、2010年にLINEに入社。
シニアリサーチャー&企画者。
LINEでは、検索・辞書・ツール・天気サービス企画者を経て、2012年に自社サービスの調査を目的としたリサーチサービスを立ち上げ、2016年に「LINEリサーチ」として事業化。
現在、LINEのインハウスのリサーチ専門部署&LINEリサーチ事業の責任者。