サービスの存在理由を、お客さまと一緒に模索し続けていく
動画というコンテンツは「言葉」「デザイン」「音楽」「ナレーション」「アニメーション」「演出」といった多くの要素から成り立っています。それゆえ動画によるコミュニケーションは、様々な情報を整理して発信することができるうえ、視聴者にメッセージをわかりやすく、かつエモーショナルに伝えられる。加えて、制作のプロセスで整理されたメッセージや情報は、その他の媒体やツールなどにおいても活用できるため、カスタマーエクスペリエンス(CX)の向上においても寄与することができます。
近年、多くの企業が動画を活用し始めていますが、これからもますます活用されていくでしょう。
動画活用にあたって企業側がまず考えるべきポイントは、「ターゲットにとって、その製品やサービスはどんな幸せや満足をもたらすことができるのか、そのために何をメッセージするか」という設計にあると思います。動画には様々な表現手段があることから、「どう表現するか」という議論になることが多い。まだ何もアイデアが決まっていない段階で「実写にしよう」「いや今回はアニメーションだ」という議論がなされるケースも多く見てきました。しかし本質的には、誰に何を伝えたくて、いつ、どんなタイミングで発信していくか、『5W』をしっかり突き詰めて、顧客体験の設計から入るべき。どう表現するか=『How』の議論は最終段階なのです。
また、現代はテクノロジーの進化によって、商品やサービスの差別化が難しい時代にもなってきています。ビジュアルや機能がすごく似ているサービスも多く見られるようになり、自社ならではの特徴をどのように打ち出したらいいのだろうか、と悩まれる方も多い。そんなときは、そのサービスが生まれてきた背景や、事業や企業の成り立ちまで深掘りすることが大事です。
社会にある企業やサービス、製品には必ず存在理由があります。創業者の意思や、開発者のこだわりやPRしたいポイントや想いなどをきちんと受け止めて整理してはじめて、差別化のポイントを見つけることができる。そして、世の中に発信すべき、企業やサービスの体験価値を提供していくことができるのです。
これは非常に負荷がかかるプロセスである上に、パートナーとして伴走する広告会社や制作会社側と、企業との信頼関係や相互理解も重要な要素になります。私たちも日頃から、単なるアウトプットをつくるだけではなく、企業が抱える課題を解決する価値あるクリエイティブを提供していくことを常に心がけています。
顧客とのコミュニケーションデザインに正しい解などはありません。常に考え続け、世の中に問い続けながら模索する先にあるものだと思います。それは「動画」に限らず、顧客体験の価値を高めるためには、とても大事なコミュニケーションのベースとなってくるでしょう。
Crevo
Crevo+(クレボプラス)
クリエイティブディレクター
山下一啓氏