「拡げるデジタル」で大切なのは統一したコミュニケーション
企業のDX化に伴い、コミュニケーション領域にも変革が始まっています。コミュニケーションには社内向けと社外向けの2種類がありますが、社内コミュニケーションのDXの目的は生産性を向上することにあります。デジタルツールを取り入れることで、作業時間やコスト、携わる人員を適正にする、いわば「縮めるデジタル」と言えるでしょう。
一方、社外向けコミュニケーションのDXは、サービスやコンテンツ、メッセージの普及に関連するものです。これまで1しか届かなかった内容が、よりリッチに10届くようになる。あるいは、オンラインのチャネルを使うことで、これまでより多くの顧客にリーチできるようになる。
これは、「拡げるデジタル」です。
この「拡げる」部分で大きな役割を担うのが、顧客に対する価値の創出を考えてきたマーケティング部門。
DXしたコミュニケーションの結果、お客さまの楽しみ方が変わったり、誰かと体験を共有する瞬間が増えたり、新たな価値観を生み出すことができているかどうか。そうした「様式の変化」までを見据えて取り組まなければなりません。
さて、もう少し掘り下げてデジタルがもたらす「拡がる」コミュニケーションについて考えてみましょう。
人々は、自分では気づかなかった欲しいモノやコトを、タイムリーかつ自分に合った状態で提供されたときに喜びを見出します。これまでにも様々なデジタル上のタッチポイントが増え、顧客体験を向上させてきました。しかしデジタルコミュニケーションの手法が増えていった結果、多くの企業が目的を見失い、Webサイト、メール配信、SNS…と新しいツールを導入することが目的となってしまっています。そしてツール別に、個別最適のKPIを設定してしまうがゆえ、その数値の上下に一喜一憂してしまう。結果、コミュニケーションの全体戦略がなく、各接点で、異なるメッセージ・体験を提供してしまうことにつながっています。
しかし企業のブランディングで最も重要なのは、統一した体験を提供することです。例えば店舗の雰囲気はよかったのに、Webサイトがいまひとつ。Webサイトでは優しいメッセージなのに、キャンペーンを全面に押し出すメールが頻繁に届く…各タッチポイントで“違う体験”をしてしまうと、それはブランドイメージの低下につながってしまうのです。
そうならないためのポイントは、「顧客起点のコミュニケーション」から戦略を考えること。企業にとってのパーパス(社会的目的)やコアバリューはなにかをもう一度捉えて、ターゲットとストーリーを定義していく。そして各チャネルに落とし込んで、オフラインも含めた、タッチポイント全体のあり方を考える。
CDPなどのツールで統合コミュニケーションが可能になってきたいま、ここで初めて、デジタルをそれぞれどう活用するか?という議論ができるのだと考えます。
WOW WORLD 取締役
コネクティ 代表取締役社長
服部 恭之氏