リアルとデジタルの情報をフィードバックし合うことが重要
DXの本質は、単なるデジタル化ではなく、事業に変革をもたらすことです。そして、その変革の基軸となるのは、お客さまに対して、どのような価値を提供できるか。顧客のニーズが多様化する中で求められるのは、企業視点から顧客視点経営への変革。つまり、カスタマーエクスペリエンス(CX)を向上させるという目的達成のために、「手段としてのDX」と捉える必要があるでしょう。
CXを向上させるためには、オンラインとオフラインにまたがる一連の顧客行動に沿って、顧客接点全体での最適化を図る必要があります。
オンとオフをつなぐ接点のひとつが、例えばコンタクトセンター。そこには事前にWeb検索で解決できなかったお客さまの課題や要望・期待が、感情も含めてダイレクトかつ大量に蓄積されている。しかしその貴重なご意見も音声のテキスト化や分析作業に高いハードルがあり、積極的な活用には至っていませんでした。
その価値ある情報を有効活用するDXには、2つのアプローチが存在します。まず、リアルの接点における課題解決をデジタル化して、デジタルの仕組みをアップデートすること。そして逆に、デジタルで得られた履歴を、リアルな応対でも参照できるようにフィードバックすること。
この両面で顧客データを統合的に蓄積し、活用していくことが、オフラインチャネルのDXを進める意義だと考えます。
しかし、そこで課題となるのが目的やゴールを設定しないまま進めてしまうことです。デジタルツールの導入で終わらせず、事業の変革を実現するためには、組織横断での目的設定が不可欠。具体的には「顧客接点を網羅するチャネルの最適化」、「オペレーションの高品質化」、「データを活用した付加価値の創出」という3つのポイントを改善していきます。
まず、チャネルの最適化は、お客さまが求める情報へのアクセスのしやすさにつながります。集約された問い合わせ要件を分析し、顧客側と企業側双方の重要度で分類しなおすことで、デジタルのセルフサービスを促進するエフォートレス化(労力の削減)が叶う。また、人による応対でも要件に応じて、スタッフを適材適所に配置することができます。
さらにAIによる分析やレコメンドを活用してオペレーションそのものの品質を高めることで、サービスレベルを向上し、ベストプラクティスを展開することができます。
そして統合データ基盤の整備により、あらゆる顧客の履歴データを参照し、活用することが可能となります。お客さまのお困りごとに先回りして解決できるようなコミュニケーションで、カスタマーサクセスの実現につなげていきます。
カスタマージャーニーのすべてにおいて、その時々で変化していく顧客の「生の声」を捉え、よりよい体験をデザインしていくこと。顧客起点のDXを行うことが重要であると、私たちは考えています。
NTTマーケティングアクト
カスタマーソリューション事業推進部
シニアプロデューサー
米林 敏幸氏