世の中の話題と結びつける
世の中の出来事というのは、一見最悪な状況に見えるものでも、うまく「テコ入れ」して魅力的な情報へと追い風を吹かせることができるものがあります。その「テコ入れ」の武器となるのが“ニュース性”です。例えば、テレビの報道番組やWebニュースなどのメディアで記事として取り上げられたり、SNSで拡散する要素のことです。
図の「ニュースマンダラ」をご覧ください。これは弊社で整理した10の基本的なニュース性を示したもので、結論から言うと、このうち3つの要素を同時に満たすときにYahoo!ニュースのトップで取り上げられたり、SNSで話題になります。
本コラムでは、このニュース性を使って、一見何の話題にもなりそうもない些細な出来事や、最悪に見える出来事を魅力的な情報へと勝手にテコ入れしていきたいと思います。今回テコ入れする題材とするのは、何かと話題になった「都道府県魅力度ランキング」でワースト1位を取った「茨城県」です。
ちょい足しレシピで、「気になる県1位」へ
正直、都道府県魅力度ワースト1位のランキングはどの県であったとしても当事者は、気分の良いものではないと思います。が、1位という“唯一性”は何にも代えがたいニュース性があります。
例えば日本一の標高を誇る富士山は誰でも知っていますが、2位の山は誰も知りません。ニュースも同様に、今回ワースト1位の茨城県のことはニュースで見かけますが、ワースト2位の佐賀県は全くといっていいほど取り上げられません。
ここで提案したいのは、このワースト1位という注目度の高い“唯一性”に対して、ポジティブなニュース性を“ちょい足し”することによって茨城県を「気になる県1位」にしてしまうのです。多くの物事は、ちょい足しレシピでポジティブなニュースに変換できます。
“意外性”から入り、 “社会性”“ローカル性”に落とし込む
もし私が茨城県の広報担当であったら、ワースト1位の情報に対して、逆風を吹かせる“意外性”というニュース性を与えるために「謝罪会見」を行います(ここから先は架空のストーリーとしてお聞きください)。
「都道府県魅力度ランキング」で茨城県がワースト1位だということが報じられた翌朝、茨城県庁にて緊急記者会見を開きます。なんと茨城県知事が冒頭から深々と謝罪のお辞儀。「この度、都道府県魅力度ランキング最下位を取ってしまったことを県民の皆様に深くお詫びします」と。
が、ここからはその真意を明らかに。
「都道府県魅力度ランキングは多分に主観で構成されたランキングであると思います。故に、私の主観では、茨城県の県民幸福度は実質1位であると思います。ワースト1位なのに日本一幸せで大変申し訳ない。こんなに幸福な茨城県の魅力を充分伝えることができていないことを謝罪いたします。お詫びに、この場を借りて記者の皆様に茨城の魅力をプレゼンテーションさせて頂きます」
と、ここで次々と茨城県の魅力を、ニュース性の要素である“フォトジェニック性”のある特産物でアピール。
例えば、茨城県のメロン生産数は日本一位。茨城オリジナルメロン品種「イバラキング」をずらりと並べて記者と試食会も。実はここまでが謝罪記者会見の第一部であり、ここから第二部と称して、午後は茨城県総合計画と呼ばれる、企業でいうところの中期経営計画の進捗経過の発表会へと突入。総合計画の中で、茨城県の学園都市つくばを中心とする科学技術やものづくり産業などを活かしたユニークな県政の取り組みを紹介し、“社会性”のある情報を記者に伝えます。
この手法は企業の記者発表会ではよくある手法で、第一部はフォトジェニックで話題性のある新商品発表会を持ってきて、第二部で経済・報道記者中心の中計発表会などを行うのがセオリーです。
そうすると、翌日の報道番組の中で、「なんと県の魅力度ランキングワースト1位で、茨城県が謝罪会見」というテロップとともに、“意外性”“唯一性”のある謝罪会見がニュースの入り口となり、そのあとに続いて「ワースト1位、茨城県の意外な魅力」ということで茨城県のメロンや総合計画といった“社会性””ローカル性”のある情報も併せて取り上げてもらうことが可能になります。
3つ以上の要素を同時に満たすことが重要
冒頭のニュースマンダラの紹介の時に申し上げましたが、ニュース性はひとつでは不十分で、3つ以上を同時に満たすことが肝要です。そのひとつが、ネガティブなものであったとしても、今回の茨城県のように、残りの2つ以上をポジティブなニュース性で満たすことができれば、“テコ入れ”が成立します。
次回以降、BtoB営業や地球温暖化、就活でもニュース性でテコ入れをしていきたいと思います。