【広報担当必見】ネット炎上レポート2021年9月版 ~批判の本質を見極めて~

調査背景・概要

株式会社エルテスでは、公開されているSNSデータを独自に収集・分析し、2019年8月より毎月ネット炎上レポートを公開しております。企業の広報やリスク管理を行う方々に炎上トレンドをお伝えすることで、自社のレピュテーション保護を行っていただきたいという想いを持ち、作成しております。

エルテスの定義するネット炎上

▼定義
ネット炎上とは、オフライン・オンラインでの行動や発言に対して、ネット上で批判が殺到し、拡散している状態を指します。対象に対する批判の投稿量が、通常時と比較して有意に多いことが条件となります。

▼炎上事例の収集方法
SNSやメディアの中で、批判が殺到しやすい媒体を複数選定し、常時ウォッチング。その中で、上記の条件を満たす事象を確認した場合、炎上事例と認定しています。

ネット炎上レポート

 

■2021年9月のネット炎上トレンド

9月に最も多かった炎上対象は前月より2ポイント増加した「企業・団体」で65%、次いで前月より4ポイント低下した「個人・著名人」と前月より6ポイント増加した「マスメディア」が15%となりました。「企業・団体」の炎上区分の内訳は、1ポイント増加した「自治体・団体」と5ポイント増加した「サービス」がそれぞれ全体の25%を占めています。「メーカー」は前月より5ポイント低下し、「IT」は3ポイント増加の5%、「インフラ」と「教育機関」は1%ずつという結果になりました。
「企業・団体」を対象とする炎上内容では、前月と比較して1ポイント低下したものの「顧客クレーム・批判」が全体の37%を占めています。次いで、18ポイント低下した「不適切発言・行為、失言」が30%となっています。「不祥事/事件ニュース」は11ポイント増加の21%となり、「情報漏えい/内部告発」は5ポイント増加の9%、「異物混入」は3ポイント増加の3%を占める結果となりました。
炎上内容として多くを占める「顧客クレーム・批判」に関しては、女性キャラクターを扱ったPRに関する炎上が目立ちました。
a) 某団体の交通安全啓発を目的とした企画で起用されたVtuberの見た目が性的に誇張されており、女性蔑視であるとしてフェミニスト団体から抗議文が寄せられ、動画が削除。
b) 某自治体が今年3月に発表した表現ガイドラインで、「萌え絵」を禁止しているのではないかとネット上で批判。
特徴として、これまで多かった「女性蔑視的な内容」を叩く炎上ではなく、「過度に女性蔑視に反対している」発信に対する反発が見られました。

 

■2021年9月の炎上理解の事例

8月26日、某県警が交通安全の啓発キャラクターとして起用したご当地VTuberに対し、“フェミニズムに根付いた政治”を提唱する団体が抗議文及び公開質問状を提出。VTuberのビジュアルが丈の短いセーラー服のような衣装を着用した若い女性であることから「女性を性的な対象として描いたキャラクターである」として「性犯罪誘発の懸念さえ感じさせる」「どのような検討を経て採用したのか」「ジェンダー平等の視点からどう考えるか」など5つの質問を寄せました。
これに対して県警側は9月9日に「男女職員がVTuberの過去映像を視聴し検討」「対面での交通安全教育が困難な中、地域に根差した芸能プロダクションの力を借り実施した」「いただいた意見は今後の参考とする」と回答したものの、「性犯罪誘発の懸念」や「ジェンダー平等の視点からどう考えるか」という問いに対しては言及しませんでした。
そして動画は9月10日に削除され、これを受けてネットやSNS上で批判がおきます。
批判の種類は大別して以下の2点です。
・団体の抗議は適切だったのかという批判。問題視されたVTuberのビジュアルが特別過激だという印象はないという意見。
・県警の対応に対する批判。抗議に対して説明や反論などせず、単に動画を削除して幕引きをはかったのではないかという意見。
また抗議をした団体に対し、VTuberによる表現行為への偏見であるとして抗議文と公開質問状が送られるなど、議論の発展を見せています。

ここでポイントとなるのは、県警が説明や反論することなく動画を削除したことが批判されている点です。よくある誤解ですが“女性を性的に表現するコンテンツ”そのものが悪いわけではありません。過度に性的で女性を侮辱するようなものでない限りは、表現の自由としてある程度は許容される問題です。問題になるとすれば、いわゆる“ゾーニング”の観点で、不特定多数の人の目に触れる場合は、不快に感じられることがないよう配慮すべきです。ただこの点に関しても、県警が起用したVTuberには擁護するコメントも多く、過度に性的だという印象ではなかったと思われます。
こうした女性蔑視につながるような批判はセンシティブな話題であるため慌てて動画を削除したのかも知れませんが、もう少し批判の本質について掘り下げて考えてもよい事例だったと言えます。
・女性を性的対象として描き、女性蔑視を助長するようなキャラクターだったのか?
・性犯罪誘発の懸念を持つようなキャラクターだったのか?
・若年層に交通安全への関心を持ってもらう役割として、適切だったのか?
これまでもPRに起用された女性キャラクターを巡って「過度に性的であり、不適切だ」という論調で炎上することが度々ありました。一方で、そうした批判の中に、本質を欠いた批判のための批判も散見されるようになりつつある印象があります。批判の本質をしっかりと捉えず、炎上したことに慌ててコンテンツの削除などに走ってしまうと、そのことが更なる批判を産む可能性もあります。

 

まとめ

2021年9月は、女性キャラクターを活用したPRや施策に関連して起きた、批判と議論が目立ちました。
以前から女性蔑視や性的役割の固定化を助長する表現は炎上しやすく、いわば可燃性の高い話題でした。一方で、そうした話題に対して本質的には批判に足らない、形式的な批判が寄せられるケースが目立ってきた印象があります。
炎上を恐れるあまり、そうしたいわばポジショントーク的な批判に踊らされることがないよう注意をすべきです。批判を受けた際にはまず「何が批判されているのか」をしっかり考えることと、「批判する権利がある人は誰なのか」について考察すべきです。今回の事例として取り上げたVTuberの件でも、批判と向き合うことなく動画を削除した県警が批判されています。
また、批判の本質を理解していないと、謝罪をする相手と内容を取り違えてしまい、更なる炎上を引き起こすことになってしまうため、注意が必要です。
こうした考察や見極めのためにも、日々の炎上から論調を学ぶことが重要だと言えるでしょう。


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